<ボクシング>“怪物”井上尚弥 父と二人三脚で掴んだ日本最速の世界王座
井岡一翔の持つ7戦を抜き、プロ6戦目の日本最速世界王者奪取記録を作った、まさに怪物にふさわしい勲章に、井上は、「プレッシャーも意識もなかった」と言うが、筆者は、井上が、何かにつけ「6」という数字を好んでいたことを知っている。親子して最初から6戦目の世界王者を狙っていたのである。 公式会見の輪が解けると、恐るべきボクサー井上尚弥を作り上げた父の真吾さんに息子の言葉を伝えた。そして、井上親子が証明したボクシングとは何かと問いかけた。 「コツコツとした努力じゃないですか。私も小、中、高と、ずっとセコンドについてきましたが、どの試合にも自信があり、不安があります。でも自分に言い聞かせるんです。尚を信じろと。でも、これからは、より強く、より引き出しを増やしていかなくちゃいけないでしょう。フライ級に上がってもスピードを落とさず、もっと強い体も作っていかねばなりません。ここからが始まりです」 井上親子の目標は、統一王者ではなく、ひとつのベルトを長く防衛すること。具志堅用高氏の持つ13度防衛記録の更新を狙っている。だが、その階級は、減量が苦しいライトフライでは難しい。大橋会長も、「減量の影響で、練習の半分の力もリングで見せることができていない。せっかくの才能をそぎ落とすことはマイナス。さっそく、フライへ階級を上げていくことを考えていく」と、今後の青写真を語った。これで実力の半分とは、また驚きだが、衝撃のタイトル奪取は井上伝説の始まりに過ぎないのである。 (文責・本郷陽一/論スポ、アスリートジャーナル)