卓球五輪代表レース最終局面へ。五輪メダリスト石川佳純、水谷隼も崖っぷち?!
そこで点差が開かなかった場合、決着は翌週のグランドファイナルに持ち越される。グランドファイナルはワールドツアーの年間成績上位16人だけが出場できるポイント数の高い大会で、大量得点のチャンスではあるが、世界の強豪を相手に勝ち上がるのは容易ではない。やはり強敵がほとんどいないノースアメリカンオープンで優勝し、グランドファイナルでは1試合でも多く勝つことが五輪代表に近づく術となる。 ただし、ひとつ加えておきたいのが、ノースアメリカンオープンに出場する早田ひな(日本生命)の存在だ。シングルスでは世界ランキング24位で日本人6番手ながら、早田といえば伊藤とのダブルスで世界卓球2019ブタペスト(個人戦)銀メダル、昨年のグランドファイナル優勝など輝かしい成績を残しているダブルス巧者だ。今年の夏以降はシングルスの成績も伸びている。 その早田にも東京2020五輪団体戦の代表入りの可能性がわずかながら残されており、ノースアメリカンオープンでは勝ち上がっていくと準々決勝で石川とあたる可能性があるため、捨て身で向かっていくだろう。石川にとっては怖い存在だ。 一方、男子の代表争いも似たような状況で、弱冠16歳の張本智和(木下グループ)がすでに自身初の五輪日本代表に確定し、残り1枠を丹羽孝希(スヴェンソン)と水谷隼(木下グループ)が争っている。最新の世界ランキングは丹羽が12位、水谷が14位で、日本代表の内定者が発表される2020年1月6日時点での有効ポイントは丹羽が9420ポイント、水谷が8925ポイントという計算だ。その差は495ポイント。女子の平野と石川ほどではないが、やはり僅差である。
丹羽と水谷の決着は、水谷に出場権のあるグランドファイナルでつくことになる。水谷は同大会でベスト4以上の成績を出さなければ丹羽を逆転できない。一方、丹羽にはグランドファイナルに繰り上げ出場できる可能性が残されている。丹羽はワールドツアーの年間成績17位で、同16位の黄鎮廷(香港)が11月のT2ダイヤモンドで足首を痛めたため、怪我の状態次第ではグランドファイナルを辞退するかもしれないのだ。もし丹羽の繰り上げ出場が決まった場合、水谷は厳しい立場に置かれる。 卓球の五輪代表争いの過酷な状況をポイント数で説明してきたが、毎週のように開かれる国際大会を次々に転戦する選手たちは、数字には表せない疲労とプレッシャーを背負っている。まさに自分との戦いだ。この正念場を切り抜け、アスリート人生を大きく変える五輪の切符を手にするのは誰なのか。結末は最後の最後までわからない。 (文責・高樹ミナ/スポーツライター)