【中国VSブラジルの貿易論争】経済悪化の中国が世界に及ぼす影響とは?
フィナンシャル・タイムズ紙の3月17日付け記事‘Brazil launches China anti-dumping probes after imports soar’が、ブラジルが中国の反ダンピング調査を開始したことを報じている。要旨は次の通り。 ブラジル産業省は、産業界からの要請に基づき、中国による工業製品ダンピング疑惑について、過去半年間に金属薄板、鉄鋼材、化学製品、タイヤなどに関して、少なくとも10余りの調査を開始した。 今般のブラジルの措置は、世界第2位の経済大国、中国が不動産セクターの減速と内需低迷の中で生産能力過剰に苦しんでおり、世界が中国からの輸出の洪水に備えている時にとられた措置である。経済活性化のため、中国は先進的な製造業、特に太陽光発電、電気自動車、バッテリーに投資している。 中国の輸出は今年1~2月の間に7.1%増加し、輸入の伸びを大きく上回った。中国の輸出価格下落が長引けば、中国と主要経済大国との貿易摩擦が高まる可能性がある。 中国税関のデータによれば、中国の対ブラジル輸出・輸入ともに、今年最初の2ヵ月間で3分の1以上増加した。 北京との関係を強化しつつ、国内産業を保護、発展させようとしている左派のルーラ大統領にとって、貿易摩擦はジレンマをもたらしている。昨年、大統領に返り咲いたルーラは、産業政策を経済戦略の中心に据えている。ブラジル政府としては、最大の貿易相手国であり、大豆や鉄鉱石などの商品を大量に購入している北京との対立を避けたいようでもある。
ブラジルの鉄鋼メーカーは、輸入した鉄鋼製品に対して、9.6%から25%の関税をかけるよう政府に要求している。中国からの鉄鋼と鉄の輸入は、2014年の16億ドルから昨年は27億ドルに増加した。中南米諸国は鉄鋼生産の主原料である鉄鉱石の世界有数の輸出国であるが、急増する安価な鉄鋼輸入は、ブラジル政府にとって頭の痛い問題だ。 また化学品とタイヤも問題になっており、産業省はここ数カ月、別個に調査を開始している。公式データによると、中国からの無水フタル酸の輸入量は、18年7月から23年6月までの間に数量ベースで2000%以上増加した。同期間、タイヤの輸入量は2300万本から4700万本へと100%以上増加し、その約80%は中国からであった。 * * *