「優秀な人材ばかり欲しがるトップは無能である」という真理 台湾企業が示してくれた教訓
いささかイラッとさせられるほど繰り返される転職サイトのCMでは、企業が「人材」を求めていることが強調される。 【写真を見る】台湾企業に“引き抜かれて”副社長になった日本人の驚愕の「前職」
「えっ! こんな人材が!」 「こんなにスカウトが!」 しかしながらよく考えてみると、そもそも企業がそんなに人材を重視しているのならば、なぜこんなに転職希望者がいるのか、なぜ転職先に空席があるのか、という疑問も生じるのである。 企業のタテマエと本音には大きな開きがある、と指摘するのは、かつて企業の経営再建などに携わってきた編集ディレクターの桃野泰徳さんだ。その問題点とは――。 ***
4月1日、多くの企業が新入社員の入社式を行い、その様子がさまざまなニュース番組、新聞記事で伝えられた。業績が好調な企業はここぞとばかりに、いかに新入社員を大切にしているかをアピール。 初任給大幅アップ、一時金をプレゼント等々。特に保険会社や銀行などは、金銭面での優遇をアピールする企業が目立つ。一般の顧客からすれば、こっちに還元しろよと言いたくなるところだが、そんな声は気にならないようだ。 とにかく人手不足のなか、「わが社は人材を大切にしています」とアピールすることが、次の採用にも有利に働くという計算が透けて見える。 大企業でも中小企業でも、「人材こそが重要だ」という点に異論をはさむ人はいないだろう。 一方で、企業側は本気でそう思っているのか、「人材」という言葉の意味を理解できているのか、と厳しい指摘をするのが、編集ディレクターの桃野泰徳さんだ。 「もちろん人材を大切にすることは重要です。しかし、日本企業のトップはどこまで本気でそう思っているのか、その点は怪しいと感じることが多々あります」(桃野さん) 桃野さんはかつて大手証券会社に勤務し、企業の再生に携わってきた経験を持つ。そうした経験をもとに著した新書『なぜこんな人が上司なのか』には、「優秀な人材を欲しがるのは無能の証である」と題された章がある。そこで紹介されているのは、かつて桃野さんが台湾を訪れたときのエピソードだ。