アメリカ育ち、マルチリンガルの「グローバル人材」帰国子女が面食らった、あまりにも「日本すぎる」企業文化
■ 「いまの仕事は楽しくなさ過ぎる」 「仕事が面白くない。このままではいけない」──。そう思っていた時、友人が遊びに来るのに合わせて有給を取ろうとした。上司から理由を尋ねられ素直に答えると、「遊びで有給取るの?」と言われた。「この会社はもう辞めよう」とMさんは決意した。入社から1年半がたった頃だった。 グローバル人材向けの転職サイトに登録し、すぐにリクルーターがついた。1~2カ月ほどで、外資系の広告代理店への転職が決まった。ビデオ面接、対面の面接を1回ずつ行い、すぐに決まった。 部長からは慰留された。「もう辞めるんですか? 来たばっかりじゃない」。そう言われても転職の決意は揺るがなかった。辞める前に有給をすべて消化しようとすると、「有給を使うんですか」と驚かれたが、結局は有給をすべて使って辞めることができたという。 転職にためらいはなかった。「3年くらいはやるべき」という考えもあったが、「いまの仕事は楽しくなさ過ぎる。早く逃れたい」という気持ちが勝った。 厚生労働省の転職者実態調査(2020年)によると、主な離職の理由は「労働条件(賃金以外)がよくなかったから」(28.2%)、「満足のいく仕事内容でなかったから」(26%)、「賃金が低かったから」(23.8%)である(3つまでの複数回答)。Mさんの1社目の離職理由はこのうち、「労働条件(賃金以外)がよくなかったから」、「満足のいく仕事内容でなかったから」に当てはまるだろう。退職理由としては典型的なものである。
■ 3社目は韓国のオンラインゲーム会社、職場はカナダ 2019年2月、Mさんの新天地での仕事が始まった。本社はアメリカ。グローバルな顧客を抱えており、そこから日本支店に仕事が回ってきた。グローバルな顧客向けに広告を企画する仕事だった。 年収は少し上がった。1社目は年収400万円。2社目は470万円になった。 業務量はそこまで多くなく、「仕事は楽だった」という。何より、職場の雰囲気がよかった。日系アメリカ人やスペイン人が働いており、グローバルな環境はMさんにぴったりだった。結局、2社目では3年間働いた。 次の転機はコロナ禍だった。当時流行っていたSNSサービス「クラブハウス」で、1歳年上の韓国人男性と意気投合し、交際がスタート。その韓国人男性は韓国サムスン電子のメキシコ支社で働いており、Mさんはメキシコに渡った。交際からわずか2カ月で結婚を決意した。ちなみに、その男性も英語・スペイン語が堪能だが、家での会話はもっぱら韓国語だという。 メキシコ生活は長くはなく、Mさんの両親の希望もあり、2人はカナダへの移住を決めた。3社目はカナダにあるオンラインゲーム会社に決まった。本社は韓国にあり、従業員は韓国人が多いという。社内では韓国語を使って働いている。 現在、本業の収入は日本円にして470万円ほど。副業として日本語教師をしており、そちらの収入も去年は150万円あったという。今年は副業で本業程度稼いだ月もあり、副業収入はさらにアップする見込みだ。