実写版の前にアニメ『はたらく細胞』をおさらい 花澤香菜、長縄まりあ、石田彰らの名演
『はたらく細胞BLACK』で描かれた“労働環境の違い”
●「がん細胞」石田彰の絶望感 そして『はたらく細胞』の魅力としては、バトル展開も大きな見どころだ。細胞たちは日夜、さまざまな“敵”との戦いを繰り広げている。とくに宿命的な強敵と言えるのが、第1期第7話に登場した大ボス・がん細胞だ。一般細胞を装っていたが突如豹変し、ゾンビのような見た目になると、“増殖”というチートじみた能力によって人体を蝕んでいった。 その戦闘力は圧倒的で、白血球(好中球)とキラーT細胞、NK細胞が3人がかりで立ち向かっても軽々と一蹴されてしまうほど。声優・石田彰による淡々としたしゃべり方も絶望感がある。 さらに第2期にあたる『はたらく細胞!!』の終盤では、そんな最強の敵がふたたび登場。さらに強大になったがん細胞が、世界(人体)を終わらせるべく白血球(好中球)たちの前に立ちはだかるのだった。作中ではまるでバトルファンタジーのような迫力で、がん細胞と免疫細胞たちの最終決戦が描き出されていく。 ●『はたらく細胞BLACK』で描かれた“労働環境の違い” とはいえ、あくまでこうした物語で描かれているのは、ある程度健康的な肉体での出来事。肉体の持ち主が不健康だった場合には、細胞たちはより過酷な“ブラック企業”のような環境で働かされることになる。その様子を取り上げたのが、スピンオフとして2021年に放送された『はたらく細胞BLACK』だった。 同作の舞台となるのは、疲労や睡眠不足、暴飲暴食などによってボロボロになった人体だ。主人公の赤血球(AA2153)はホワイトな職場紹介映像を見せられるも、現実には過酷きわまりない環境に放り込まれることに。そこはもはや戦場のような有様で、血小板が刺々しくなり、マクロファージですら疲れきった笑顔を浮かべる始末だった。そしてアルコールによる脂肪肝や胃潰瘍、尿路結石や淋菌の侵入など、あらゆる体調不良によって細胞たちが苦しめられていく。 その一方、夜の繫華街のような肝臓で、アダルトな格好をした肝細胞たちに赤血球が癒される場面などもあり、いろいろな意味で本編とは一味違った光景を楽しませてくれた。 なお、今回公開される実写映画版では、本編に加えて『はたらく細胞BLACK』の内容も反映されているとのこと。芦田愛菜演じる健康な高校生・漆崎日胡と、阿部サダヲ演じる不健康な父親・茂という2人の体内をベースに物語が展開していくという構図だ。こうした構成の工夫によって、細胞たちの“労働環境の違い”がより一層浮き彫りになりそうだ。 実写では原作やアニメとは違った世界観が作り上げられるはずなので、まったく新たな形の『はたらく細胞』が見られるかもしれない。永野芽郁や佐藤健など豪華キャストの活躍にも期待しつつ、公開開始を楽しみに待ちたい。
キットゥン希美