「無駄な支出ランキング」はマスクのマーケティングの才能を示している…専門家は危険性もあると指摘(海外)
難解なテーマをゲームの要素を取り入れて急速に広め、大きな注目を集める
テキサス大学オースティン校(University of Texas at Austin)のコミュニケーション学教授であり、デジタル戦略コンサルタントのナタリー・アンドレアス(Natalie Andreas)は、マスクのランキングについて、「爆発的に広がり、高い影響力を持つマーケティング戦略として、興味深い可能性を秘めている」と話す。 その形式はソーシャルメディアのフィードのように「頻繁にチェックしたり、シェアしたりすることを促進する」ものであり、投票やシェアを通じて一般の人々が参加することで、広がる勢いを加速する可能性があると彼女は話している。 シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネス(Chicago's Booth School of Business)で行動科学とマーケティングを教えるアイエレット・フィッシュバック(Ayelet Fishbach)教授は、ランキングは「ゲーミフィケーション(ゲーム化)」戦略を活用したものだと話している。 このような戦略は、エンターテイメント性があり、マスクのランキングに興味を持つ潜在的なオーディエンスを惹きつけるだろう。そして興味を持ったその人々は、友人に対してやソーシャルメディア上でその情報を伝え、メッセージを広める可能性が高くなる。 または、マスク自身がこのランキングのことを語ったように、「エンターテインメントの価値は壮大なものになる」だろう。
双方向性や参加型で「コントロールしている感覚」を与える
マスクは、一般の人々が何を削減すべきか、または守るべきかについて提案できる仮想の意見箱を設置すると約束している。彼は「もし我々が重要なものを削減している、あるいは無駄なものを削減していないと思ったら、いつでも知らせてほしい」と書いている。マスクとトランプの代理人はBusiness Insiderのコメントの要請に応じていない。 マスクのこの計画は、特に政府の支出のような退屈な分野では注目を集めるであろうことは間違いなく、さらに人々がその結果に対し、自分が深く関わっていると感じるようになるかもしれない。そしてソーシャルメディアや動画配信、テキストメッセージなど気が散るものが多い現代の環境では、注目こそが勝ちの高い商品となる。 アンドレアスは、このランキングは「大胆で透明性を重視する改革者」としての「マスクのブランドを強化する可能性がある」としながらも、ランキングに関係する人や組織が、状況を説明することができるように「慎重に取り扱う必要がある」と注意を促している。 彼女はユーザーが投票したり、無駄と思う政策の事例について投稿できることで、「積極的なエンゲージメントや、利用者が作成するコンテンツを生み出し、ランキングを双方向性や中毒性のあるものにすることが可能」だと述べた。 南カリフォルニア大学アネンバーグ・コミュニケーション・ジャーナリズム・スクール(USC Annenberg School for Communication and Journalism)で臨床コミュニケーション学を教えるカレン・ノース(Karen North)教授は、「この取り組みは、トランプがアメリカの政治で人々の感情を強く引き出し、時には彼を敵視する反応を生む特別な力があることとも関係している」と述べている。ノース教授は以前、ビル・クリントン(Bill Clinton)政権で科学技術政策局に勤務していた。 彼女は、このランキングは、この次期大統領がいかに政治を 「ショー化 」しているかを示す例だと述べている。 「政府の支出削減の話ほどつまらないものはない。それは、ただ数学の問題を解くよりもさらに退屈だ」とノースは話している。
ゲーミフィケーション戦略にはリスクがある
ノースはゲームミフィケーション戦略にはリスクが伴うと語る。 「人々は『してやったり』というゲームに引き込まれるだろう。その結果、重要な詳細よりも結果に囚われてしまうかもしれない」
Geoff Weiss,Grace Eliza Goodwin