“飛ぶボール”が適合球に戻って影響を受けるのは?
掛布氏は、飛ばないボールに戻った適合球の影響を受けないためには「何も意識をしないこと」が大切だと強調する。「怖いのは意識すること。飛ばないボールだから、もっと振らなきゃいけないとか、ポイントの場所を変えなきゃいけないとか、過剰な意識をしてしまうとバッティングが狂います。野球選手、特にバッティングというものは、デリケートですから、環境の影響を受けやすいんです。古い話ですが、甲子園からラッキーゾーンが無くなったとき、八木裕(現2軍打撃コーチ)が、遠くへ飛ばすことを意識してしまって、バッティングを狂わせたことを覚えています。だから、その適合球に変わった最初のカードの結果が、重要になってきますね。そこで、ここまでと、そう変わらぬ結果が出れば、『変わらないな。意識する必要はないだろう』となるけれど、逆に、さっぱりと打てなくなると、『やっぱり違うぞ! 何かを考えなきゃ』と、意識過剰の方向に舵を切ることになってしまいます。実績のある選手は、ボールに関わらず、去年までの数字は残すことができるんです。阪神で言えば、マートンがそうでしょう。その意味で、私は、統一球が『飛ばないボール』に戻る、まず最初の試合に注目しています」 逆に適合球の恩恵を受けるであろう、投手陣の防御率がいいのは、セでは広島、パではオリックス。どちらも、現在の首位チームであることを考えると、そうペナントレースに影響を与えないのでは? とも推測できるが、野球は、そう簡単ではない。 「打線が投手陣に心理的な余裕を与えるというケースが少なくありません。ただ、長いシーズンを見ると、やはり投手陣が安定しているチームが優勝争いをすることは間違いないでしょう。適合球に戻ることで、サプライズが、起こりにくくなったと考えることもできるかもしれませんが、いぜんとして球場によって、ホームランの出やすい球場と、出にくい球場というのは、あるわけですからね」とは、掛布氏。 使われるボールは、どこも一緒で不平等はないが、ボールによって野球が変わるのは、どうなのだろう。そもそも、現場もファンも混乱に陥れて振り回される結果となった統一球とは何なのだろう。本当に必要なものなのか?と考えてしまうのは筆者だけだろうか? (文責・本郷陽一/論スポ、アスリートジャーナル)