AI「アレクサ」が変えた「まちのお肉屋さん」 自転車操業から効率化・時給増への軌跡【人手不足時代の妙手】
「アレクサ、ハムチーズサンドを5ケース作りました」 うるま市で創業42年の仲松ミートの工場内で、パート従業員が小さなモニターに向かって話しかける。AI(人工知能)音声認識サービス「アレクサ」は報告をデータ化し、内容が事務所内のパソコンに蓄積されていく。 【写真】「いちぎん食堂」を経営する一銀企画専務の照屋瑞紀さん(28)。バイト仲介アプリを活用し、求人を強化した
時給をアップしても人件費は減少
執行役員の仲本和美氏は「はじめのうちは機械に話しかける気恥ずかしさがあったようだが、今では『アレクサ、おはよう』と慣れたもの」と笑う。 主力はハムとチーズをパン粉の生地で包んだフライ商品「ハムチーズサンド」。近隣で暮らす40~70代のパート19人が、月平均10万枚を県内のスーパーや食品メーカー向けに製造する。 そんな「まちのお肉屋さん」は、人手不足に伴う人材確保に向けた賃上げが各業界で経営課題となる中、ITを活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)化に挑戦した。仲本氏は「最低賃金引き上げに伴い時給をアップしたが、アレクサを含めたDX化で工場は効率化された」と説明。2年前の導入後、人件費は減少したと胸を張る。
「作れるだけ作り、ストックから売る」から一変
システム導入前、従業員は自分がどれだけの量の商品を作っているのか把握しておらず、経営陣は1カ月先の売り上げ予想も正確に立てられなかった。 作れるだけ作ってストックし、注文があれば販売。工場は月~土曜の午前8時半~午後5時に稼働し、ストックの状況次第で日曜出勤や役員が作業に入ることもあった。 自転車操業で経営を維持してきたが、コロナ禍で状況は一変した。フライ商品などスーパーへの販売需要はあったが、行動制限によって売り上げの柱の一つだったバーベキューやヤギ汁など仕出し用の肉製品の販売が止まった。 年間売り上げは500万円減少し、新たな収入源を確保するため新商品開発や新規事業の取り組みに迫られた。だが、そのための従業員を確保しようにも、どの業界も人手不足は深刻。現有人員で生産性を上げるしか道はなかった。