高速道路「休日千円」は失敗だったか 麻生政権で経済効果8千億円、「定額制」の社会実験 「高速サブスク化」という選択(下)
高額な高速道路料金が「地域格差の正体」だとして、現行の走行距離に応じて課金される「距離制」を改め、普通車400円、大型車1500円など「定額制」で走り放題とする料金制度改革を、元トヨタ副社長の栗岡完爾さんと経営コンサルタントの近藤宙時さんが提言している。(「上」から続く) 【グラフでみる】都道府県をまたぐ移動手段の割合 ■走り放題だった2年3カ月 深夜の東名高速・海老名サービスエリアに、「車中泊」するノアやヴォクシーが並んでいた。 15年前の平成21(2009)年3月から2年3カ月間、「高速休日上限千円」という政策が行われた際のことだ。 前年のリーマン・ショックを受け、当時の麻生太郎政権が景気対策として決断。乗用車とバイクのみで物流は対象外、さらに地方部のみ、ETC(自動料金収受システム)利用のみと限定的だったが、土日祝日どこまで走っても千円という政策の結果、ETCの普及にも弾みがつき、各地の大型サービスエリアには車中泊する車が目立った。 この政策のための国家予算は当初、「2年で5千億円」といわれたが、国土交通省の有識者委資料によると実際にかかったのは年間1500億円ほどだった。一方、観光への直接効果は年間3600億円、経済全体への効果は年間8千億円に上ったという。 ■渋滞は「全日定額ならさばける」 昨年5月、近藤さんは参院国土交通委に参考人として出席、定額制のメリットを説明した。一方で政府側は一連の答弁で、次の3つのデメリットを示した。 1つ目は「激しい渋滞が発生する」というもので、「休日千円」の際、毎週末に大型連休並みの渋滞が発生し、特に東名、名神両高速では約3倍の渋滞となって、物流に悪影響が出たことを念頭に置いている。 これについて、近藤さんは「休日千円はよく『失敗』といわれているが、もともと渋滞しやすい休日のみ実施し、ピークをよりピークにしてしまった。全日定額制ならさばけると考えている」と指摘。さらに、定額制にすると出口で料金所がいらなくなるため、現在10キロに1カ所程度ある出口について、首都高速のような簡易な出口を増やすことで、車が分散化して出口渋滞を解消できるとした。 また、休日千円が行われた平成21年ごろはまだ、新東名高速は開通していなかった。24、28両年の静岡、愛知両県での新東名の開通により、東名高速の渋滞はかなりの程度解消されている。