おが粉の高騰追い打ちに 菌床シイタケ農家、経営難に
キノコの菌床栽培に使われる「おが粉」の高騰が、菌床シイタケ生産者の経営を圧迫している。背景には林業の人手不足による供給量減に加え、近年広がるバイオマス(生物由来資源)発電原料との競合がある。生産量全国5位の北海道は、高齢化や光熱費高騰で生産量が年々減少しており、おが粉高騰が離農に拍車をかけかねない。道の研究機関は代替素材の実用化を探る。 【グラフで見る】菌床栽培生シイタケ生産者、生産量の推移 北海道の菌床シイタケの生産者数は高齢化などを背景に減少し、2021年まで全国2位(5254トン)だった生産量は、23年は3439トンにまで減った。厳しい情勢に追い打ちをかけるのが生産コストの上昇だ。中でも培地に使うおが粉の高騰が目立つ。 北海道きのこ生産・消費振興会の北川修会長は「シイタケの生産コストは上がる一方だ」と嘆く。北川会長の農園は菌床を1個200円で購入しているが、10年前と比べて倍近くになった。パックやフィルムなど包装資材も毎年価格が上がり、暖房費は高止まりが続く。 おが粉高騰の背景には、原料となる広葉樹の伐採量減少がある。全国森林組合連合会によると「高齢化で切り手が不足していることに加え、近年需要が拡大するバイオマス発電原料との競合も見られる」という。おが粉向けには針葉樹と一緒に伐採された広葉樹を仕分ける必要があるが、バイオマス原料は樹種を問わないため現場の負担も少ない。 種菌メーカー、森産業北海道営業所の担当者は「じりじりと値上がりしていたが、ここ2、3年は値上げが顕著だ」と話す。おが粉の製造業者も原木の確保や輸送費高騰に苦慮しているという。「国がバイオマスを推進する中、燃料用に過度に集中する状況を解消してほしい」と訴える。 林野庁は「府県の産地からもおが粉が高騰しているという話は聞いており、実態を調査している」(特用林産対策室)とする。 生産量全国トップの徳島県は「価格高騰が生産量にどれほど影響を与えているかは分からない」(林業振興課)としながらも、22年度からおが粉を含む資材高騰に対する、国の補助事業を活用しているとした。 JA全農ぐんま園芸販売課は「おが粉高騰は昨年夏から顕著になっていると感じる。原料調達の在り方を長期的に考えないといけない」と受け止める。また「自ら伐採する人の高齢化、林道の整備の遅れもある。キノコ産業を衰退させないためにも経営面のバックアップが必要」と話す。
代替素材の柳に着目
代替素材の研究も進む。道立総合研究機構は、道内で広く分布し成長の早い柳に着目する。一般的なカバノキから柳のおが粉に置き換えた研究では、発生収量が最大34%増加。M級以上の収量も増えた。シイタケ生産に良い影響を与える窒素やグルカンが豊富に含まれていることが理由とみられる。 根室市の岡田産業は昨年まで約5年間、柳おが粉で栽培を検証した。「発生量が多くなる。味も明らかに良くなった」と手応えを語る。道総研森林研究本部林産試験場企業支援部の原田陽部長は「従来のおが粉よりも安価にするには、安定供給体制の構築が鍵になる」とする。 (小澤伸彬)
日本農業新聞