クジラの中で最も希少な種のひとつ、英語では「最適」と名付けられたセミクジラ
体長の3分の1が頭、大西洋や太平洋沿岸の温暖な場所に生息
セミクジラは大型のクジラの中で最も希少な種だ。セミクジラ科にはいくつかの種が存在するが、どれも体長の3分の1ほどの大きな頭部を持つ。頭部とアゴには何百ものクジラヒゲがある。セミクジラを含むヒゲクジラ亜目は、クシ状のクジラヒゲと剛毛を使い、泳ぎながら海水を濾過し、小さなエサを捕らえる。セミクジラは長さ2.4メートルにもなるクジラヒゲを使い、動物プランクトンなどの微生物を食べる。 【動画】「ハグ」をするセミクジラ、レアな映像 南半球の2種と北半球のセミクジラは、大西洋や太平洋沿岸の温暖な場所に生息する。セミクジラは、漁の対象として「最適(right)」であるとして、捕鯨者によって「最適なクジラ(Right Whale)」と名付けられた。脂肪やクジラヒゲの利用価値が高く、コルセットや馬車のムチなどのさまざまな加工品に使われてきた。セミクジラは、殺されると厚い脂肪により、海面に浮き上がる。17~19世紀の捕鯨最盛期に個体数は激減し、絶滅寸前となった。メスは成熟するのに10年かかり、1年の妊娠期間を経て1頭しか出産しないので、個体数はなかなか増加しない。 セミクジラ科のすべての種が絶滅の危機に瀕しており、1949年から世界中で完全に保護されることとなった。保護開始からミナミセミクジラの個体数は順調に増加しており、現在、数千頭が生息すると推定されている。南アフリカ海域での個体数は、1940年の約100頭から現在は1000頭程度にまで回復したと考えられている。 キタセミクジラは大型のクジラの中で最も絶滅危機に瀕している種だ。個体数はわずか数百頭で、保護が始まってから数十年が経過したが、増加の兆しは見られない。
ナショナル ジオグラフィック 日本版編集部