「凌風丸」4代目に! 日本の海洋気象観測を担う
実は7年前にもう一隻の観測船「啓風丸」に体験乗船する機会があり、小欄でも詳しく取り上げました。7年前の小欄を引用すると……観測船の女性参加が始まったのはごく最近で2016年のことです。かつて男性だけだったころは、入浴後、船員がタオル1枚で廊下を歩いていたこともあったとか。一方で女性船員は男性の個室前の廊下を何も考えず通り過ぎていたそうで、そんな“配慮”からも解放されそうです。いろいろ考えなくていいので……まさに実感だと思います。 「女性もたくさん乗ってもらっていろんな観測ができたらと思う」(長谷川さん)
操舵室は当然、最新の機器が採用されていますが、ひときわ目を引いたのは海図です。これまでの紙海図から電子海図になりました。タッチパネルディスプレイで拡大や地図のスクロールも自由自在。運航業務の効率化や安全性の向上が期待されます。
紙は更新の際は赤を入れるなど煩雑な作業が必要で、書いたら書いた分汚れます。また、何といってもかさばります。電子海図は海上保安庁からの情報をインストールすれば更新されます。また、2地点の距離と時間の関係も、2点をプロットすれば自動的にわかります。一方、「使いきれていないところもあり、慣れていない」と話す担当者。電子化については慣れが必要であることはどんな仕事も同じのようです。
水質分析のために海水をくみ上げるCTD(Conductivity Temperature Depth Profiler=電気伝導度水温水深計)も公開されました。7年前の体験乗船のことを思い出しました。この装置の操作にはまさに職人芸が求められます。観測範囲は最大水深6000m、海水の流れを見ながらクレーンとワイヤーを使って装置を海中に沈めていきますが、この採水作業だけで約6時間かかるそうです。海底にこすって壊れたら一巻の終わり。採水後、分析用の瓶に海水を移し替える作業は極寒の環境で行うこともありますが、手袋をはめるとすべりやすいため素手で行います。肌が荒れても、ハンドクリームはご法度。分析の際にクリームの成分を混入させないためだということです。
四代目となった凌風丸は報道公開から2日後の4月26日、すでに東京を出港し、本州の南方海域に向かいました。日本で観測船による海上気象観測が始まったのは1921年(大正10年)のこと、100年以上の歴史を持ち、今後も啓風丸とともにその重責を担うことになります。 (了)