TikTokのフィットネス動画が女性の健康を害する...「フィットスピレーション」とは何か?【最新研究】
<6割の動画がダイエット、健康、そして運動に関して誤っている、もしくは有害な情報を含んでいることが判明>
いわゆる「フィットスピレーション(Fitspiration)」動画が有害な身体イメージを強化し、健康に関する誤った情報を広めており、さらに女性が過剰に性的な対象になっていることをオーストラリアの研究者らが明らかにした。 【動画】「フィットスピレーション」の是非をめぐる激論 本研究における「フィットスピレーション・コンテンツ」とは、「食事や運動を通じてアクティブかつ健康的なライフスタイルを送れるように、インスピレーションを与えることを目的とした画像や動画」と定義される。 その上で、視聴者の多くが10代であるTikTokが自分の体型への不満、過度なダイエット、そして摂食障害の美化につながっていることをオーストラリアのフリンダース大学の研究者が発表した。本研究の筆頭著者のサマンサ・プライド氏は次のように述べる。 「TikTokのフィットスピレーション動画はたいてい理想化された体型を奨励しており、特に若い女性にとってはマイナスの身体イメージを引き起こさせる懸念があります」 フリンダース大学の研究者らは、フィットネス(#fitness)、フィットスポ(#fitspo)、ジムトック(#gymtok)、フィットトック(#fittok)といった人気のハッシュタグを使用している200本のTikTokのフィットスピレーション動画を分析。 その大部分がフィットネスに関する資格を有していないインフルエンサーによって投稿されており、6割の動画がダイエットや健康、そして運動に関して誤っている、もしくは有害な情報を含んでいることが判明した。 インフルエンサーの人気の高さばかりが注目され、情報の正確性や安全性が二の次になっていることは憂慮すべき点であると共同執筆者で社会学者のエヴァ・ケンプス教授は述べる。 また、インフルエンサーと広告に関するさらなる研究と、その規制強化の必要性があるとして、共同執筆者で心理学者のイヴァンカ・プリチャード准教授は次のように述べる。 「フィットネス系インフルエンサーがエビデンスに基づいた情報を共有し、健康的で現実的な身体イメージや運動を広められるように、公衆衛生に関する機関と連携を強化する必要があります」 また、今回分析されたコンテンツの半数以上(55.7%)が女性を性的な対象にしており、20%はボディシェイミング(Body Shaming/体型批判)、8.6%は摂食障害行動を助長していることが判明した。筆頭著者のサマンサ・プライド氏は「ネガティブなメッセージを発している」と指摘する。 これらのフィットスピレーション動画に登場する男性が10%に対して、女性は78%と女性のほうがはるかに多い。また、女性が登場するコンテンツのほうが外見に関する運動を奨励していた。特に太ももやお尻といった女性の身体の一部が多く取り上げられ、細く引き締まっていることが理想的な女性の体型とされている。 「TikTokのフィットスピレーション動画は理想化された体型を促すことが多く、特に若い女性にネガティブな身体イメージを引き起こす懸念があります」とプライド氏は述べる。 一般的にこれらのコンテンツは「痩せた体型」を理想として紹介しており、依然として「細さ」こそが女性にとっての主要な身体問題であるとしている。そのため、身体面でも精神面でも悪影響を与えてしまう。 しかし、男性もまたフィットスピレーション動画で筋肉質な体型を理想として描かれており、顔が見えなかったりぼやかされた形で、身体の一部のみが取り上げられている。男性にも身体イメージの影響があることを示唆するエビデンスが増えていることをケンプス教授は指摘する。 フィットスピレーション動画に男性は集団で登場するのに対して、女性は1人で登場しがちだ。男性にとってジムは社会的かつ競争的な場とされているに対して、女性にとっては運動が個別の取り組みとされるという、性別による運動習慣が反映されているという。 「デジタルメディアの影響が強まる現代において、健康的な身体イメージをうながし、健全なフィットネス文化を育てるためにもフィットスピレーション・コンテンツの影響に注視することが極めて重要です」とプライド氏は述べる。 【参考文献】 Pryde, S., Kemps, E., & Prichard, I. (2024). "You started working out to get a flat stomach and a fat a$$": A content analysis of fitspiration videos on TikTok. Body Image, 51.
ハッティ・ウィルモス