炭化した巻物の解読からナスカの地上絵発見、AIで加速した科学的発見の数々
クジラの言語の解読
マッコウクジラが発する謎めいたクリック音にさまざまなテンポやリズム、長さがあることは分かっているものの、球根状の頭部にある器官から発せられるこれらの音で何を言っているのかは人間の耳では理解できない。 一方で機械学習は、科学者らがコーダと呼ばれるクリックシーケンスを分析するのに役立っている。科学者はカリブ海に生息する約60頭のマッコウクジラから9000件ほどのコーダを録音した。この研究により、人間はいつの日かマッコウクジラとコミュニケーションをとれるようになるかもしれない。 科学者たちはクジラの単独発声、合唱、クジラ同士のやり取りにおけるコーダのタイミングと頻度を調査。AIで視覚化すると、これまでに見られなかったコーダのパターンが浮かび上がった。研究者たちはそれを人間のコミュニケーションの音声体系に似ていると評している。
遺跡の発見
一方、陸上では、AIがペルー・ナスカ砂漠に刻まれた地上絵の探索を加速させている。考古学者らはこれらの発見と記録にほぼ1世紀を費やしてきた。 多くの場合、上空からしか見えないこの広大な地上絵には、幾何学模様や人間のような形象、ナイフを持ったシャチなどが描かれている。 山形大学の坂井正人教授(考古学)が率いる研究チームは、20年時点で確認された地上絵430個の高解像度画像を使用して、物体検出AIモデルを訓練した。 22年9月から23年2月にかけて、チームはナスカ砂漠でモデルの精度を検証。徒歩とドローン用いて有望な地点を調査し、最終的に303個の表象的な地上絵を「地上検証」した。わずか数カ月のうちに既知の地上絵の数をほぼ倍にした形だ。 AIモデルは完璧には程遠かった。629平方キロに及ぶ砂漠地帯から4万7000カ所以上の候補地が提案されたからだ。チームはそれらの提案を精査し、「非常に有望」な候補地1309カ所を特定。有望な候補の割合は、AIモデルが提案した36カ所につき1カ所だったという。 ドイツ・イエナにあるマックス・プランク人類史科学研究所の研究者兼データサイエンティスト、アミナ・ジャンバジャンサン氏はそれでもなお、AIは考古学、特に砂漠などの遠隔地や過酷な地形において大きな貢献を果たす可能性があると指摘した。