【大学野球】早慶戦で本塁打を放った清原正吾 「達成感」に聞こえるコメントの一つひとつ
長男としての思い
清原には使命があった。 「家族のためにも、僕が長男坊として、還元できたらなと思っています」 清原家を背負う覚悟を、野球で示そうとしていたのだった。小学3年から6年時までは学童野球チームでプレーしていたが、一度はユニフォームを脱いでいる。4年春を前にした本誌インタビューでは「父がいろいろあって、重圧、プレッシャーもかなり大きく、野球から目を背けたくなってしまったのがあります」と明かした。 なぜ、もう一度、野球を始めたのかと言えば弟・勝児さん(慶應義塾高で昨夏の甲子園全国制覇)が中学時代、父から野球を教わったのをきっかけに、家族で集まる機会が増えた。 「長男としての思いが芽生え、母の大変さを目の当たりにする機会が増え、こんなに良い環境で育ててもらい、最後の学生生活で親孝行がしたいと考えました。父と母を喜ばせたい思いが、根底にあります」
「父親のDNAですかね!!」
父が西武時代に着けていた背番号3を着けた今春、一塁のレギュラーを獲得すると、チームトップタイの打率.269、同トップの7打点で初のベストナインを受賞した。学生ラストシーズンの今秋。明大1回戦でリーグ戦初本塁打、東大3回戦で2号。そして、早大1回戦で豪快なソロアーチを左翼席中段へ運んだ。相手投手は今秋、6勝無敗だった早大のエース・伊藤樹(3年・仙台育英高)。慶大はすでにこの秋の5位が決定。この早大1回戦で敗退すれば、早大の春秋連覇が決まる一戦で、4年生のバットが意地を見せたのだった。2万6000人の観衆の中、ベース1周で生還し、慶大の三塁ベンチへ戻る際は、父がいるネット裏のスタンドに指を差し、ユニフォーム胸のKEIOを2度たたいて、誇らしげな表情を見せた。 「完璧な当たりでした。何を言ったか覚えていませんが(苦笑)、『見たか!!』ですかね。ここまで育ててくれて、ありがとう、と」 これまでの2つのホームランボールは、父と母にプレゼントした。3個目は……。 「弟ですね。彼も次、大学に入学する。たぶん、できると思いますけど(苦笑)。そこで僕のホームランボールが原動力になって、また、大学生活を頑張ってもらいたいです」