「良い馬が多くて迷う」今年のホープフルS 超名牝シーザリオの仔が教えてくれた2歳G1馬の指標
2018年ホープフルSを勝ったサートゥルナーリア
中央競馬は暮れの大一番・有馬記念が終わったが、まだまだ熱い戦いは続く。正真正銘、今年のラストJRAG1となるホープフルステークスが28日に中山競馬場の芝2000メートルを舞台に行われる。来春のクラシックを見据える2歳馬による中距離王者決定戦。調教を通じてさまざまな視点から過去のG1レースを振り返る企画「調教捜査官の回顧録」を寄稿する競馬ライターの井内利彰氏は6年前、まだ実力未知数の若駒が調教で叩き出した衝撃タイムを見て、G1ホースになることを確信したという。 【動画】「ダビスタレベル」 最低人気馬が“30馬身差”の圧勝を収めた衝撃映像 ◇ ◇ ◇ ホープフルSがG1に昇格したのが、2017年。過去7頭の勝ち馬の中には牡馬三冠を果たし、今後は種牡馬としても期待されているコントレイルの名があるものの、個人的に最も記憶に残っているのはサートゥルナーリア。 デビューは2018年6月10日の阪神芝1600メートルだったが、初見は4月の栗東。すごく雰囲気のある馬がいると思い、ゼッケン表を見ると母の名が「シーザリオ」。評判には聞いていたけど「やっぱ、スゴイわ」と。この感覚は半兄のエピファネイアの初見の時に感じたもの、という話はキャロットクラブの会報誌でも書かせていただいた。 ただ、デビュー前の追い切りでは目立って速い時計を出していたわけではなかった。むしろ、こんな時計で大丈夫というレベル。おまけに最終追い切りのCWでは併せ馬で遅れ。手応えが悪く遅れたわけではなかったが、追い切りで動くようなタイプではないのかなという印象を持っていた。 新馬戦を無事勝ち上がり、2戦目に萩Sを選択。この時の調教、10月15日の栗東坂路でやっぱり動く馬なんだと思い知らされる。それが「11.6秒」という4ハロン(F、800メートル)目のラップ。この時の4F時計は55.5秒なので、これだけ遅い数字なら、これくらい出るよねという意見はもちろん分かる。ただ、問題はそこではなく、3F目が13.4秒だったところから1.8秒も加速したことが驚き。しかも坂路なので、傾斜がきつい箇所での加速だから、スピード的な瞬発力だけでなく、パワーも半端ないことが証明されるようなラップだった。 もちろん、萩Sも完勝して2連勝でのホープフルS。すでに坂路で動くことは分かっていたが、分かっていてもベタ褒めするしかなかったのが最終追い切り。2F23.8秒、ラスト2Fが11.9秒、11.9秒というラップ。これで持続力もあるんだということが分かったし、この時も2F目から3F目の区間で1.8秒加速している。2歳とは思えない凄まじい動きを見せているが、この映像はJRAレーシングビュアーに加入していれば、今でも確認することができる。4F目区間に入ってから軽く促しただけでこの走りができる、そんな馬が2歳のG1を勝つんだという、一つの指標にしてもらってもよいかもしれない。 当時は坂路の時計しかデータ提供されていなかったが、今ではトラックのウッドチップ馬場(美W、CW)でも詳細のラップを確認することができる。