テスラが「トヨタを買収しよう」と言ったとき、イーロン・マスクとトランプを日本政府は本当に止められるのか…?
真っ青になる「豊田創業家」と「政府」
トヨタの従業員から見てもこの買収が成立すれば、その時点で自動車業界での勝ち組の地位が確定します。 脱炭素条件下での世界競争次第では、中国勢に敗れて東芝やシャープのような道をたどる可能性がある日本の自動車業界ですが、少なくともトヨタだけは勝ち組が確定します。 日産、ホンダの社員はそれをうらやむことでしょう。 この買収提案に本当の意味で反対しなければならないのは、創業家と日本政府です。創業家である豊田家が買収に反対するのは当然として、国益を考えたらもっと深刻なのは日本政府です。というのもイーロン・マスクの戦略方針次第で、ティア1以下の日本の部品メーカーたちは壊滅的な状況に落ち込むことになるからです。 そこで日本政府が経済安保を理由に買収に反対するとします。 するとトランプ大統領はにやりと笑いながら言い返すでしょう。 「国益よりも同盟国の絆を信じて、自由経済の原則を重視しろと言ったのは日本じゃないか?」と。 日本政府は、「トヨタはダメだがマツダならなんとか」と言うかもしれません。 しかしイーロン・マスクは、「弱小企業など買う気はない」とけんもほろろな対応を見せるでしょう。 なにしろトヨタがだめなら他のビッグ5かそれともBMWか韓国の現代か、いくらでもベターな選択肢はあります。 日本が拒否するなら、日本経済が完全に沈む選択肢を選ぶ権利が彼にもあるのです。
トヨタがダメなら「日産・ホンダ連合」か……
このシミュレーション、私も何度か頭の中で考えましたが、私の結論はそれでも日本側が買収を拒否して終わるだろうというものでした。トヨタと自動車産業は日本にとって最大の国益だからです。 一方でひょっとするとホンダは日産と経営統合後に自ら、テスラへの身売りを考えているかもしれません。 なにしろホンダの三部敏宏社長は、「あらゆる可能性を検討している」と明言しているくらいですから。 さらに連載記事『トヨタにピンチ到来か…「EV大逆風」の“最大の落とし穴”が発覚!EVに乗ってみてわかった、「EV時代は意外と早くやってくる」と確信した3つの現実』でも、EV時代のテスラの存在感を解説しているので、参考になさってください。
鈴木 貴博(経営戦略コンサルタント)
【関連記事】
- 【さらに読む】トヨタにピンチ到来か…「EV大逆風」の“最大の落とし穴”が発覚!EVに乗ってみてわかった、「EV時代は意外と早くやってくる」と確信した3つの現実
- 「日本人は滅びるんじゃないか」ユニクロ柳井正の「亡国論」を経済評論家が検討した結果…やっぱり「日本はヤバかった」!
- トヨタもセブンも時価総額でみんな惨敗…!それでもなお、20年後も一流であり続ける「日本唯一の巨大企業」の名前
- セブン-イレブンだけじゃない…!外資企業が虎視眈々と狙う「ディスカウントショップ」と「世界的人気キャラクター」の名前
- いつの間に日本人は「夜遊び」をしなくなったのか…「夜の街」が壊滅した日本で進む「経済・大停滞」のヤバすぎる中身