【2025年NISA戦略】米国株「一人勝ち」終わる!トランプ2.0でインフレ再燃懸念、世界同時株安の引き金に
■ 「米国一人勝ち」でオルカンも恩恵 新NISAでは、資産運用会社に支払う信託報酬を極端に低く抑えたインデックス連動型の投資信託が人気を集めました。特に、世界の株式に分散投資をするMSCIオールカントリー(オルカン)や、S&P500指数連動のファンドが圧倒的人気で、オルカンかSP500を買っておけば安心、といったムードさえ広がりました。結果はどうだったでしょうか。 日本経済新聞によると、年初来の資金流入額は「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(三菱UFJアセットマネジメント)が2兆1744億円(11月末時点)、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」(同)が1兆7647億円にもなります。オルカンも米国株の組入比率が6割を超えており、S&Pの投資信託と並び「米国一人勝ち」の恩恵を大きく受けました。 こうしたオルカン、SP500への人気集中は2025年もおそらく続くのでしょう。顧客獲得競争の激化を見越して、三菱UFJアセットマネジメントは「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の信託報酬を年0.09240~0.09372%から年0.07568%~0.08140%に1月下旬にも引き下げる方針で、さらに注目を集めそうです。 ただし、オルカン、SP500は資産運用の裾野を広げる牽引役としての役割が期待される一方で、ともに依存する米国経済の不透明感が急速に高まっていることには注意も必要です。2025年は、いよいよ「米国一人勝ち」の状況が終わる可能性があるからです。 その最大の要因が、トランプ政権の発足です。
■ インフレ懸念再燃で米国株は大幅な調整か FRBは12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げを決めたものの、パウエル議長は記者会見で「利下げを急がない」といった趣旨の発言をしました。4回程度と見込まれていた2025年の利下げの回数は2回程度、場合によっては打ち止めかという見方が出てきています。 背景の1つは、想定以上の米国経済の底堅さです。堅調な個人消費を背景に、7~9月期の実質GDP(国内総生産)成長率は上方修正されました。 しかし、それ以上に今後、影響が大きくなると見られているのが、トランプ政権の政策です。減税による財政拡張や輸入関税の強化、それにや不法移民の強制送還など、インフレ圧力を強める政策が目白押しです。すでに、長期金利は上昇傾向にあり、債券市場は完全にインフレにフォーカスしています。 インフレ懸念が再燃すれば景気の足かせになります。トランプ氏が大統領選で勝利した後、規制緩和などを期待して関連銘柄の株価が急上昇する「トランプラリー」が起きて米国株高を牽引しましたが、すでにその熱狂ムードも過ぎ去っています。12月にダウ工業株平均が50年ぶりとなる10日連続で値下がりしたのは、その表れでしょう。 こうしたトランプ2.0の不確実性により、2025年は歴史的な高値水準にある米国株の大幅な調整は避けられないと考えています。米国株は世界の株式時価総額の半分以上を占めているため、米国株の調整が波及し世界同時株安を招く可能性もあります。 そうした状況の中、日本はどうなるでしょうか。 ※投資の最終決定は各自の責任でお願いいたします。
中野 晴啓