水戸黄門で「200回以上お風呂に入った」由美かおる、60年変わらない美貌の“ライフワーク”
師・西野皓三氏の提唱する“西野式呼吸法”の弟子
由美さんが、息もつかせぬ立ち回りシーンを切れ味よく演じることができたのは、25歳から本格的に始めた呼吸法のおかげもある。 師の西野皓三氏は、大阪市立大学で医学を志していたが、肉体を使って美しさを表現するバレエに転向。「多くのダンサーを育てる中で、生命の根源、若さ、元気、美しさなどを追求されていたんだと思う」と由美さんは考えている。西野氏はさらに合気道や中国拳法を学び“西野流呼吸法”にたどり着く。由美さんも一緒に合気道を習い、呼吸法を学んだ。“西野流呼吸法”を実践すると、身体のすみずみまで酸素がいき渡り、細胞が活性化して若々しく元気でいられる─西野氏はそのメカニズムを医学的に研究し、効果も立証。熱心に学んだ由美さんは“西野塾”で呼吸法を教える側になる。 「本田宗一郎さん、堺屋太一さん、井深大さんなどもいらしていました。その方たちと一緒に、私も厚生省の諮問機関のメンバーに選ばれたことがあります。テーマは“どうしたら健康に長生きできるか”。私は呼吸法と健康について話させていただきました」 そのとき厚生大臣だった故・渡部恒三氏は、 「審議会の前日にメンバーから電話がかかってきて『由美かおるさんは出ますか?』って。で、由美さんのおかげで全員出席だった」 と、当時の様子を語っていた。各界の錚々たる人たちが由美かおるのファンだ。手塚治虫氏はコケティッシュなイラストを、東郷青児氏はデッサンを残している。小柴昌俊氏のノーベル物理学賞受賞のパーティーでは、花束を贈呈した。由美さんのいくつになっても変わらない美貌と、溌剌としてチャーミングな色気、素直で飾らない性格が多くの男性を魅了するのだろう。 1990年代に入り、日本の高齢化が進むと同時に由美さんは講演が多くなる。病院関係、教育委員会などいろいろなところで、“西野流呼吸法”の効果を話してきた。 「多いときは、1か月に20回ぐらい。『水戸黄門』をやりながらだったので、週に5日は京都の撮影所で朝から晩まで撮影して、土日に講演をやっていました。自分の身体を自分で健康にしていく方法がありますよって、呼吸法をお教えするんです」 由美さんは、西野流呼吸法に、動作やポーズをプラス。スムーズに深い呼吸ができ、ストレッチにもなるようにした“由美ブリージング”を提唱している。 「由美さんのやっている呼吸法はいいに決まっています」 と断言するのは、帯津三敬病院の帯津良一先生。帯津先生は西洋医学に東洋医学も取り入れた治療法で、多くのがん患者の身体と心を救ってきた。2人は10年ほど前に雑誌の対談で意気投合。 「私は、白隠というお坊さんの丹田呼吸法を若いときからやっています。由美さんの呼吸法は、白隠の“三要”も満たしているんですね」(帯津先生) “三要”とは姿勢・呼吸・心を整えること。アプローチは違っても、同じ深い呼吸にたどり着いた。2人は一緒に講演を行い、ときどき会って食事をすることも。 「先生はお酒がお好きなんです。食べ物の好き嫌いもおありですけど、その人が好きなものを食べればいいんですね。先生とのたわいないおしゃべりも楽しいです」 年齢も職業も違う同志だ。