オンデマンド交通は「路線バス」の代替ではない! グーグル&アマゾンに学ぶべき「マイカーの代替」戦略とは
グーグルの自動運転革命
呼べば来る究極の移動サービス、オンデマンド交通が世界を席巻している。サンスフランシスコやアリゾナ、ロサンゼルスで営業を開始したグーグル社のWaymo one(ウェモワン)は、8月には週当たり10万人を輸送し、大人気だ。運転士が運転席にはいないものの、何かあれば遠隔監視で運転を支援しており、スマートフォンで呼んで行きたい場所まで24時間365日連れて行ってくれる夢の「どこでもドア」の世界が始まっている。 【画像】「えぇぇぇぇ!」 これがトヨタ自動車の「平均年収」です! グラフで見る 車両は第5世代、ジャガーのセダンタイプ、電気自動車(EV)の「I-PACE」だ。仮に乗用車タイプで年間400万人の輸送実績となれば、オンデマンド交通に対するわれわれの認識、価値観を大きく変えることになるだろう。 車両価格は 「1台30万ドル(約4435万円)」 ともいわれているものの、大型バス並みの価格と同等と考えてみるとどうだろうか。1台当たりの輸送量は路線バスの足元にも及ばないが、1都市に300~500台程度の配備だけで、都市部でも生じている移動の足不足の解決に貢献できるものだ。 アマゾン社もオンデマンド交通専用の車両を開発し、現在は従業員限定での運行が行われている。2024年9月15日にはサンフランシスコで一般市民を対象とした体験乗車会も行い、いよいよサンフランシスコ市内やラスベガスなどでの本格的な商用運行がスタートするのではないかといわれている。 また、グーグル社もオンデマンド交通専用のハンドルのない第6世代の車両をすでにお披露目しており、ドアトゥドアの移動サービス、オンデマンド交通市場がさらに注目されていくだろう。
無人運転1万台で描く都市未来図
ドイツの港湾都市ハンブルグでは、市内全域を対象としたオンデマンド交通がパンデミック(世界的大流行)前から運行しており、年間290万人の輸送実績を2023年に記録して話題だ。 車両はフォルクスワーゲン社が乗り合い専用に開発した6人乗り、洗練されたデザインのEV車両だ。スマートフォンで呼んで行きたい場所まで24時間365日、プロのドライバーが連れて行っていってくれ、道路上にはミーティングポイントとなる停留所の目印はなく、スマートフォン内のバーチャル停留所で乗降する、スマートフォン限定が特徴のサービスだ。運行はフォルクスワーゲン社の子会社MOIA(モイア)が担っており、運賃は路線バスとタクシーの中間の価格設定となっており、バスやタクシーとは差別化した新しいサービス領域、新しい移動の価値創造を目指すものだ。 ハンブルグ市内には郊外鉄道、地下鉄、路線バス、タクシー、ライドシェアなどの移動サービスが充実しているものの、脱炭素化を先導し、自動車の代替となる若者にも刺さる新たなサービスとして、オンデマンド交通を積極的に推進している都市のひとつだ。市内を運営する交通事業者と自動車会社が連携している点も特徴的であり、アプリの連携にとどまらず、市内全域の次世代の交通網再編に共同で取り組んでおり、世界では大きな話題だ。 2030年には都市内の幹と枝を交通事業者が担い、葉の部分を1万台の無人運転によるオンデマンド交通で自動車会社などがサービスする包括的な事業が進められている。自動車会社が本格的に都市内の交通事業に参画する注目の都市、事業でもある。