【ラーメン&餃子】こんなところにあったっけ? 系の町中華が、新たなる心のオアシスになった話:パリッコ『今週のハマりメシ』第159回
そしてラーメンと餃子もやってきた。これがまた、見た目からしてあまりにもうまそうで嬉しくなってしまう。午前中からホッピーをぐびぐびやりつつ、ピータンや、サービスの豆腐と合わせて勝手に作ったピータン豆腐に舌鼓を打つ。そこにラーメンと餃子。ほんの十数分前のセンチメンタリズムはどこへやら、今はただ、ただ楽しくて、嬉しい。 ナカのおかわり、お願いします。 ラーメンのスープをひと口すすり、また顔がほころぶ。鶏だしのオーソドックスな味わいながら、ただシンプルなだけではなく、僕がちょうど欲していた醤油味の濃さで、脂のコクも絶妙だ。本当にほんのり、感じるか感じないかくらいの酸味も食欲を増幅させる。 太めでぷりぷりな縮れ麺もいい。甘めの濃い味でバキバキ食感のメンマもいい。硬くはないけれどしっかり食べごたえがあり、肉の旨味がまったく抜けていないチャーシューが3枚。これも最高だ。 それから餃子。皮は薄めでもちもち。焼き加減絶妙で香ばしく、餡は野菜と肉のバランスがいい。にんにくはしっかりと入っているけれど、塩気は薄いから、卓上の醤油、酢、ラー油を調合したタレにどっぷりと漬けて食べるといい。心身が癒される味わいだ。 ピータンの土台であった生のねぎは、さすがに添えものとしては食べきれない量だと思っていたけれど、ラーメンに入れてしまうともはやトッピング。後半は、味変のコショウとともに、ネギラーメンとしてありがたく完食した。 店主さんは、客席から丸見えの厨房で鮮やかに中華鍋を振り、餃子の餡をこねては包み、驚くほどの手際の良さで料理を提供してくれる。それらしいなまりがあるから、本場中国からやってきた方だろうか。若くして、かなりの達人なことは間違いない。接客も気持ちよく、地元の人に愛されていることが深く納得できる。 正午に近づき少しずつ、酒目的ではなくて、普通に食事をするお客さんたちが来店しはじめた。僕のような酔狂な客はそろそろ席を譲る時間帯だろう。 お会計をお願いし、ついでに「このお店、いつごろ開店したんですか?」と聞いてみる。すると「まだ2年目なんですよ。それまでは、ずっと川崎でやっていて」とのこと。 今、「大宇軒 川崎」でWEB検索してみたところ、特にそれらしき情報は見つからなかった。移転にあたり、心機一転、店名を変えたのかもしれない。 帰宅してからふと、この場所に以前どんな店があったのかが気になって、Googleストリートビューで過去の風景を遡ってみた。すると、確認できた範囲で、2009年は「龍昇飯店」、2014年は「中華満腹」、2017年は「醤香王」、2018年は「健康とんこつラーメン」、2019年は「中国家庭料理 龍」という店だったらしい。はは、そりゃあ記憶に残っていないわけだ。 こんな出会いをし、大好きになってしまった大宇軒は、末長くこの地で営業を続けてほしいと、心から願う。 取材・文・撮影/パリッコ
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