【ラーメン&餃子】こんなところにあったっけ? 系の町中華が、新たなる心のオアシスになった話:パリッコ『今週のハマりメシ』第159回
ある日、あるとき、ある場所で食べた食事が、その日の気分や体調にあまりにもぴたりとハマることが、ごくまれにある。 【写真】サービスの中華風冷やっこ それは、飲み食いが好きな僕にとって大げさでなく無上の喜びだし、ベストな選択ができたことに対し、「自分って天才?」と、心密かに脳内でガッツポーズをとってしまう瞬間でもある。 そんな"ハマりメシ"を求め、今日もメシを食い、酒を飲むのです。 * * * 突然ぐっと気温が下がり、数ヶ月の間はのほほんと半袖Tシャツで過ごしていればよかったのに、なんらかの羽織るものが必要になったここ数日。 寂しい。僕はこの"季節の変わり目"というやつに人一倍弱く、なんともセンチメンタルな心持ちで、しかしそれをあえ楽しむように、地元エリアを徘徊していた。 こんな日は、なんの変哲もなくて素朴な、温かいそば、うどん、ラーメンあたりを神妙な面持ちですすり、来たるべき秋冬に向けて心身を整えておきたい。やがてたどり着いたのは、西武新宿線の武蔵関駅付近だった。 ふと、視線の先に「大宇軒」という町中華風の店が目に入る。 右隣の、煮干ラーメンの名店「ラーメン屋 ジョン」、それから左隣の、普通のたこ焼き屋と見せかけつつ料理がなんでもうまいカウンター酒場「和楽」は、どちらも大好きな店だ。けれども、その間にこんなにも僕の興味を惹く店はあっただろうか? 俗に言う、見える人にしか見えない店? いやしかし、こんなに目立つ看板、そんなに頻繁に来る街ではないとはいえ、長年気づかないはずがない。少なくとも10年、いや、5年以内にできた店だと思う。よく見れば、看板やのれんなどがまだ新しく見えるし、所々に本場大陸中華っぽいテイストも感じる。どことなく"大宇宙"を連想させる店名も妙にいいし、とにかくここまで気になってしまったんだから、入らないわけにはいかないだろう。おじゃまします。 店内は真っ赤なL字カウンターのみ、約10席ほどの小さな店だ。カウンター内にはひとり、僕よりも若く見える男性店主が、忙しそうにあれこれと作業をしている。 メニューを見る。なんとこのご時世に、ラーメンが650円(税込)。これは間違いなく、僕が求めていた素朴系のラーメンに違いない。 酒、つまみ1、つまみ2の3種類を組み合わせられる「ほろ酔いセット」なるものもある。この時点で、飲み客にも積極的な店だということが判断できて嬉しい。たとえば、生ビール+餃子+青椒肉絲で1200円。これ、けっこう驚異的なお得さなんじゃないだろうか。 当然つまみ類も充実していて、150円の「味付玉子」、 220円の「冷奴」や「ザーサイ」に始まり、これまたお手頃なラインナップ。 さらに酒類もいろいろある。大好きなホッピーまで飲める。まだなにも食べていない段階で言うのもなんだけど、ここ、天国なんじゃないだろうか? 「ホッピーセット 白」(420円)、「ピータン」(450円)、それから、初志貫徹でラーメンは必ず食べたい。さらにメニューをよく見ると「ラーメン+焼き餃子」セットが880円と、目を疑うほどにお得だ。それにしよう。 すぐにホッピーセットが到着。ナカの量が頼もしくて嬉しい。ところで実は白状すると、今はまだ午前中なのだった。しかしながら、先客である若い男女ふたり組は、もうそれぞれに思い思いのほろ酔いセットを頼んでいるし、僕のあとすぐにやってきた常連らしき先輩も、店主さんに「とるよ?」と言って、棚から出したいいちこのキープボトルをやりはじめている。あ、やっぱりここ、天国だ。 注文した品々よりも早く目の前にことりと置かれたのは、サービスだという冷奴。酸味と甘味のバランスが良い中華風醤油だれがかけられており、とてもありがたい。 続いてピータン。これにも同様のたれがかけられていて、ねぎがたっぷりで、予想以上のボリューム感だ。ピータンとねぎを口に運び、そのまったりしゃきしゃきとした味を感じつつ、ホッピーを飲んで、はたと気づく。僕は、ピータンとホッピーがメニューにあると、それだけでその店を好きになってしまうということに。
【関連記事】
- 【エビステーキカツ】もう二度と会えないかもしれない。所沢の定食屋の日替わりメニュー「エビステーキカツセット」に感動:パリッコ『今週のハマりメシ』第158回
- 【牛すじカレー】ただものじゃないマスターが作る、地元激シブ酒場の牛すじカレー:パリッコ『今週のハマりメシ』第157回
- 【モダン焼き】大阪はチェーン店の満足度も高かった。「鶴橋風月」のモダン焼き超デラックスバージョンで大満腹!:パリッコ『今週のハマりメシ』第156回
- 【カレーライス】あこがれの大阪名物、自由軒の「名物カレー」を人生初体験!:パリッコ『今週のハマりメシ』第155回
- 【魯肉飯&大腸麺線】要町の小さな名店「有夏茶房」の本格台湾料理は、現代生活におけるポーションだ:パリッコ『今週のハマりメシ』第154回