中国のレアアース支配に対するオーストラリア鉱山王の挑戦
オーストラリアの鉱山王ジーナ・ラインハートが、Lynas Rare Earths(ライナス・レア・アース)の株式の5.82%を保有していることを明らかにした。これにより、重要な技術に不可欠な金属の供給において中国が優位に立つ状況に対し、西側諸国が対抗するための主要プレイヤーになろうとするラインハートの計画の一端が明らかになった。 ライナスへの出資は、今月初めに報告されたラインハートから米国のレア・アース鉱山会社MP Materials(MPマテリアルズ)への5.3%の出資と呼応するものだ。 ラインハートによるライナスへの出資は、豪州時間4月15日遅くにオーストラリア証券取引所に提出された大口株主届出書で明らかにされた。 報告によると、ラインハートとその一族企業のHancock Prospecting(ハンコック・プロスペクティング)が、昨年のクリスマス直前からライナスの株式を買い始め、最初の160万ドル(約2億5000万円)の投資に加えて、豪州時間4月15日に2600万ドル(約40億2000万円)を追加投資し、5%を超える大株主となった。 カリフォルニア州のマウンテンパス鉱山を操業するMPマテリアルズと、西オーストラリア州のマウントウェルド鉱山を操業するライナスは、ネオジムやプラセオジムといった金属を世界のレアアース供給網に供給する最大手企業の2社となる。 ■完璧な組み合わせ 両社の資産を合わせれば、世界のレアアース供給の25%以上をカバーできる完璧な組み合わせとなる。 今年初め、MPマテリアルズとライナスの合併を目指した協議が行われたが、合意には至らなかった。
現状につながる2つの救済
だがラインハートは、その収入の大半を生み出し300億ドルの財産の基盤となっている鉄鉱石事業を補完する大規模なレアアース事業を構築しようと考えているため、交渉が再開される可能性がある。 ラインハートの拡大していくレアアース事業に関する計画は明らかにされていないが、電気自動車(EV)に使用される最高クラスの永久磁石の製造や、ロケットの誘導システムに不可欠な金属を生産または探査している4社に出資していることは重要だ。 ライナスとMPマテリアルズへの出資に加え、ラインハートはオーストラリア北部準州でノーランズプロジェクトの開発を計画しているアラフラ・レア・アースの10%、ブラジルのレアアース企業の5.8%を保有している。 さらに重要なのは、ライナスとMPマテリアルズの両社が米テキサス州でレアアース処理施設を建設しており、これらの工場は中国製の完成品をレアアースサプライチェーンから排除するようにデザインされていることだ。 ライナスとMPマテリアルズの両社は、中国によるおそらく意図的な過剰生産による価格引き下げによって、生き残りのための苦汁を飲まされてきた。 ■2つの救済 MPは2018年に倒産の危機から救われた。またライナスは2017年、中国からの重要金属供給への過度の依存を懸念していた日本政府と密接な関係にある企業から資金を注入されて救われた。 オーストラリアの経済紙によると、ラインハートはライナスのアマンダ・ラカーズ最高経営責任者(CEO)と「良好な関係」にあるとされる。 西側諸国の2大レアアース鉱山会社の株式を大量に保有し、2社の探査会社にも出資しているラインハートは、今月初めにフォーブスで示唆した鉱山会社の合併を仕かけるのに好都合な立場にある。
Tim Treadgold