巨大地震は一度で終わらないかもしれない…「南海トラフ巨大地震」の「激しすぎる揺れ」の想定
南海トラフ地震、4つのシナリオ
南海トラフで発生する地震を規模(想定震源断層域の面積)や被害の大きさなどから、「全割れ」「半割れ」「一部割れ」「局所割れ」の4つに分類されている(2-1図)。 【画像】「南海トラフ巨大地震」で日本が衝撃的な有り様に…そのヤバすぎる被害規模 一つ目の「全割れ」は、南海トラフの想定震源域の広い範囲が破壊され、南海トラフ沿いのすべての地域で被害が生じる地震。過去の事例で「全割れ」に該当するといわれるのは1707年宝永地震だ。二つ目の「半割れ」は、南海トラフの想定震源域のうち、破壊されていない領域があり、南海トラフ沿いに、大きな被害が出ている地域と、まだ被害が出ていない地域がある地震。史料が明確な過去の事例で「半割れ」に該当するのは、1854年安政東海地震と安政南海地震、1944年昭和東南海地震と1946年昭和南海地震などがある。三つめの「一部割れ」は、南海トラフの想定震源域のうち、狭い領域のみが破壊され、被害が出ている地域は南海トラフ全体と比較すると限られた範囲の地震。四つ目の「局所割れ」は、南海トラフの想定震源域での破壊がごく限られた領域のみで、震源近傍においても被害はほとんどない地震。そこで今、警戒すべきとされるのは、被害が大きくなると想定される「全割れ」と「半割れ」の地震である。 そして、とくに警戒されているのが、「半割れ」の地震だ。M8級の半割れ地震が発生した後、破壊されていない他の領域が時間差で誘発・連動してM8級の続発地震の発生が懸念されている。 過去に発生した南海トラフ巨大地震では、こうした半割れ地震と続発地震との時間差が数十秒~数年又は数十年と大きなばらつきがある。例えば直近の南海トラフ地震では、東側の震源域が動いた1944年昭和東南海地震(M8.2)の後、2年の時間差で西側震源域が動いて引き起こされた1946年昭和南海地震(Mj[気象庁マグニチュード]8.4)の続発地震がある。その前の1854年安政東海地震(Mj 8.4・東側震源域)の後、32時間後に安政南海地震(Mj8.4・西側震源域)が起きている。また、1707年宝永地震(Mw[モーメントマグニチュード]8.7~9.3)は、すべての震源域が同時又は短時間で連動破壊が起きた「全割れ」の地震と推定されているが、887年仁和地震、1361年正平地震、1498年明応地震でも半割れ後に続発地震が発生していた可能性があるといわれる。 2023年1月10日、東北大学、東京大学、京都大学の研究チームが、英科学誌サイエンティフィック・リポーツに論文を発表。主な内容は、「南海トラフの東西どちらかで8以上の巨大地震が発生した後、3年以内にもう片方でも巨大地震が続発する確率は4.3~96%」だとしている。これは、「世界の過去約110年間の地震統計から、より短期間で続発する確率を計算すると、1カ月以内で2.6~85%、1週間以内では2.1~77%」という。確率幅が広いのは、「1361年以降の続発例を6回中2回とみる見方と、4回とみる見方があるため」とのこと。しかし、この確率幅ではよくわからないという意見もあるが、重要課題なので今後の研究に期待している。 もし、「半割れ」と判定された地震が発生した場合、気象庁は「南海トラフ地震臨時情報」を発表し、続発地震の発生リスクが高いケースに対しては臨時情報に「巨大地震警戒」というフレーズが加えられる。その場合、津波からの避難が間に合わない地域などの住民には約1週間の事前避難が求められる。