「ブスな顔のぬいぐるみは買わない」ディズニー限定グッズを買い占めるグループに密着 大量購入する驚愕の手法
「たまにブスなのがいるから要注意」
それにしても、なぜ彼女たちは4人分ごとにスタンバイパスを取るのだろうか。同アプリでは、20人まではグループとして登録でき、スタンバイパスの取得も全員分を同じ予約枠で一度に取ることができるのだ。 この疑問をぶつけると、劉姐は一言こう言った。 「付いてきたらわかるよ」 3度目のスタンバイパスの利用開始時間となり、筆者と劉姐が梓梓と小静とともに店の入り口へと向かう。 店内は、思った以上にゆったりとしていた。小学校の教室2つ分ほどの広々とした空間に、客は30人ほどしかいない。外の人口密度と比べても半分以下だ。スタンバイ制で利用客の数をコントロールしているおかげだろうが、なるほどこれなら快適に買い物ができる。しかしやはり、外から覗き込んだ時に感じた通り、買い物客の大部分からはプロ臭がする。 彼女らはそれぞれ別の陳列台で“仕入れ”を始めた。筆者はまず劉姐に付いていった。手当たり次第に商品を買い物かごに入れていくのかと思いきや、一つ一つの商品に、汚れや不具合がないか、熱心に見極めてから買い物かごに入れる。ショップ側ですら、これほど慎重に検品をしていないのではないかと思えるほどだった。 「中国人の客はうるさいから。ちょっとでも汚れていたら返品しろって言ってくる。特に気をつけないといけないのは、ぬいぐるみ類。よく見ると顔が全部違ってて、たまにブスなのがいるから要注意」 商品を選別する手を止めることなく劉姐が言った。 一方、梓梓と小静は、さかんにスマホ画面を確認しながら、商品を選んでいる。後ろから覗き込むと、開いていたのは小紅書(シャオホンスゥ・中国のSNS)のアプリだった。 筆者の視線に気がついた小静が話す。 「小紅書のフォロワーから注文が入ってきている。それに従って商品を買い付けている」 買い付けのやり方の違いは、彼女らの販路の違いによるものだ。劉姐が説明する。 「うちは阿麗さんの物流会社でまとめて中国に送って在庫として保管しておいて、天猫(ティエンマオ)などのBtoCサイトに出品し、購入した顧客には国内配送で商品を届けている。ただ、限定品といっても人気がないものだと売れ残ってしまうので、事前にSNSなどでリサーチをした鉄板商品だけを買い付けるようにしている。梓梓さんと小静さんは、小紅書で入った予約に従って商品を買って、日本から購入者に直送している。過剰在庫になるリスクは低いけど、ひとりひとりの顧客に対応しないといけないから面倒くさいし、送料が割高になるぶん販売価格を抑えないと売れないので、利益は少なくなる」 劉姐の話を聞いていると、 「17万3900円になります」 という声が後ろから聞こえた。 振り向くと、やはり転売ヤーと見られる40代前後の3人の男がレジ台の前に立っており、台の上には大量のグッズが並んでいる。 3人のうちのひとりがこともなげにクレジットカードを差し出し、支払いを行う。同時に残り2人がレジ台のグッズをかき集め、持参したビニールバッグに詰め込んでいった。 「ここはこれで終わりやな」 「そやな、次はどこやったっけ?」 店を出ていく彼らからそんな会話が聞こえてきた。話しぶりからして、日本人もしくは日本語ネイティブであることは間違いなさそうだ。