29歳で突然の社長就任、売上げが前年比6割に急落 「3人の父」のサポートで立て直した「必死のパッチ」の事業承継 ~日本広告企業後編
◆退路を断って「必死のパッチ」
――3人とも経営者ですからとても素晴らしいアドバイザーですね。ところで事業承継では何が大事だと思われますか。 最初に会社を引き継げと背中を突き飛ばしてくれたのは父親ですが、その時に、自分自身の意思で、決意しないと何も進まないことに気がつきました。 本当に遮二無二に難問を解決し、自分自身がこの会社の最終責任者としてやっていくのだと覚悟しました。 当時を知る社員が「あのときは、社長は『必死のパッチ』やった」という話をしてくれるのですが、ありがたいと思います。 私はとても稚拙だったと思いますが、自分自身が退路を断ち、ここで生きていくのだという必死の思いでした。 今になって振り返ると、その覚悟が一番肝要だったと思います。
◆「アナログの最たるもの」ロケーションメディアの活路
――交通広告や野外広告というロケーションメディアは広告業界の中ではでアナログの最たるものだと思います。デジタル化が進展する中で活路はありますか。 私もECサイトはよく使っており、便利なことはわかっております、しかし靴のような商品は店舗でサイズを確かめたり、お店の方と話しながら靴がフィットしているか確かめることが必要です。 デジタル化が進んでも実店舗というアナログな部分がなくてはならないのではないでしょうか。 交通広告などのロケーションメディアはアナログなものですが、消費商材のスポンサーの方々には、最終的にお金を使われるポイントの近くで広告を出したいというニーズがあります。 例えば居酒屋さんに飲料メーカーのポスターが貼ってあれば、お客さまがポスターをご覧になって「あのビールをもらえますか」となります。 つまり消費ポイントの近くで広告を出すというロケーションメディアのニーズは今と同じ形ではないかもしれませんが、今後も拡大すると思います。 少なくともコロナ禍が終息すれば、人手が増え、ローケーションメディアは回復すると見ています。
◆大阪万博にも期待
ロケーションメディアには課題もありますが、新しいストーリーを描くことで課題を解決できると考えています。 例えば2025年には大阪万博が開かれます。 それを一つの起爆剤として、大阪の町は大きく変貌を遂げてようとしています。 国内ばかりか海外からもいらっしゃるお客様に対して、インターネットとも連携しながら、大阪で新しいロケーションメディアを生み出し、こんな場所でこんな面白いことができる、というストーリーをつくっていきます。 これは大阪だけではありません。 全国の地方都市が人口を減らさないために都市の魅力を増そうとしています。 そうした動きに関わっていきたいと思います。 東京でも大阪でも、日本中で、その場所にいる人たちが“ワクワクするような面白いこと“をたくさんつくって行きたいですね。 ロケーションメディアが、まだまだ掘り下げていない分野を、ステークホルダーと協業しながら、深めていきたいと考えています。