<ネタばれあり>山田孝之が〝英雄〟ではない「十一人の賊軍」 原案・笠原和夫とは何者か
令和の集団抗争時代劇
アナーキーな映画で知られた若松孝二監督の元で映画を学んだ白石監督は、笠原の遺志を受け継ぎつつ、大活劇に仕立て上げた。11人が立てこもるとりでの大セット、そこを舞台に大暴れする山田孝之をはじめ、新発田藩の剣豪役の仲野太賀ら、若手俳優の気合の入ったアクション、その迫力を倍増させる火薬とCG。昭和の集団抗争時代劇を令和にアップグレードしてみせた。 11人のアウトローが獅子奮迅する大活劇としても存分に楽しめるが、阿部サダヲが演じた新発田藩の狡猾(こうかつ)な家老、溝口に、藩、つまり国家の非情な論理を見、11人の罪人たちに大日本帝国軍に使い捨てにされた〝皇軍兵士〟の怨念(おんねん)を重ねることもできるだろう。目を転じれば、世界は今も、「大義」を掲げて庶民を犠牲にしている。政と笠原の憤怒は消えていないのである。
ひとシネマ編集長 勝田友巳