湘南の惜敗にパワハラ疑惑で指揮官不在の影響はあったのか?
誰が音頭を取るわけでもなく、湘南ベルマーレの選手たちが自然発生的に自陣の中央に集まった。サガン鳥栖のFWイサック・クエンカ(28)に、前半25分の先制点に続いて同41分にも追加点を決められた直後の光景。時間にしてほんの数秒だったが、選手たちの意思で円陣が組まれた。 「焦らないでいこうと。絶対に流れが来るので、自分たちのサッカーをしよう、と」 円陣のなかで交わされた言葉を明かしてくれたMF古林将太(28)も、キャプテンを務めるDF大野和成(30)も、指揮を執った高橋健二コーチ(49)も。ベルマーレの誰もが、異口同音に「ちょっと硬かった」と前半を振り返る。しかし、円陣が解けた後にベルマーレは変貌を遂げた。 ホームのShonan BMWスタジアム平塚で、17日午後7時3分にキックオフを迎えた明治安田生命J1リーグ第23節。DAZN(ダ・ゾーン)によるライブストリーミング配信だけでなく、NHKのBS1でも生中継された一戦はさまざまな意味で注目を集めていた。 一部スポーツ紙でパワーハラスメント行為疑惑が報じられ、13日から活動を自粛しているベルマーレの曹貴裁(チョウ・キジェ)監督(50)は、当然ながらベルマーレのベンチにいない。クラブ史上で最長となる8年目の指揮を執る曹監督に代わり、13日から急きょ練習を指導してきた高橋コーチは「僕の気合いが入りすぎた」と、0-2になるまでの重苦しい展開を振り返った。 「我々のサッカーは我々にしかできないと、メンタルの部分に働きかけをしてきました。ただ、それが逆に(我々のサッカーを)やろうとするあまり、選手たちの動きがちょっと硬くなったのかな、と」 反撃の一撃が決まったのは、円陣が解けたわずか2分後だった。相手ゴール前のこぼれ球にFW野田隆之介(30)が左足を振り抜く。相手キーパーに弾かれても、必死に体勢を立て直しながら今度は右足を一閃。またもやキーパーに防がれたこぼれ球を、FW松田天馬(24)が泥臭く押し込んだ。