ベット・ゴードンの特集上映が11月より開催 初長編『ヴァラエティ』など日本劇場初公開
アメリカのインディペンデント映画作家ベット・ゴードンが手がけた3作品を上映する特集企画『ベット・ゴードン エンプティ ニューヨーク』が、11月より渋谷シアター・イメージフォーラム、今冬に大阪シネ・ヌーヴォほかにて全国順次公開されることが決定した。 【写真】ベット・ゴードン3作品の場面写真 ゴードンは、1970年代末から80年代にニューヨークのアンダーグラウンドで起こった音楽やアートのムーブメント「ノー・ウェイヴ」周辺で活動した映画作家。セクシュアリティ、欲望、権力をテーマに、現在も大胆な探求と創作を行っている。本企画では、ゴードンの初長編作品『ヴァラエティ』と、中編『エンプティ・スーツケース』、そして短編『エニバディズ・ウーマン』を一挙公開。すべての作品が国内劇場初公開となる。 ゴードンは自身の創作に影響を与えた人物として、ジャン=リュック・ゴダール、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー、ミケランジェロ・アントニオーニ、ジョン・カサヴェテスなどの映画作家たち、フランスの映画批評家アンドレ・バザン、そしてフェミニスト映画理論家ローラ・マルヴィの名を挙げている。また、シャンタル・アケルマンやウルリケ・オッティンガーら女性の映画作家とともにオムニバス映画『Seven Women, Seven Sins(原題)』に参加していることからも、ゴードンがフェミニスト映画理論などを踏まえた映画作家であることが窺い知れる。 初長編作品『ヴァラエティ』は、これまでフェミニズム映画の文脈で捉えられながらも、ポルノやポルノ映画館を取り上げてるために初公開当時から物議を醸し、様々な議論を起こしてきた。ゴードンは本作について、「男性的な空間に侵入し、それを覆したかったのです」と語っている。脚本は『血みどろ贓物ハイスクール』などのキャシー・アッカー、撮影は『ストレンジャー・ザン・パラダイス』のトム・ディチロが担った。音楽は、ラウンジ・リザーズで活動していたジョン・ルーリーが手がけ、写真家のナン・ゴールディンが「ナン」の役名で出演。ナンはスチール写真の撮影でも携わり、2009年には同名の写真集が刊行されている。そのほか、『ミナリ』のウィル・パットン、『ブギーナイツ』のルイス・ガスマン、ジョン・ウォーターズ作品常連のクッキー・ミューラーらが出演している。 中短編の2作品は、ゴードンの初期のキャリアである実験映画作家としての側面が色濃く出ている。『エンプティ・スーツケース』は国際映画祭などで上映され、『ヴァラエティ』制作への足がかりとなった作品だ。この作品でもナンが出演・制作参加している。『エニバディズ・ウーマン』は映画館「VARIETY PHOTOPLAYS」を舞台に制作され、長編『ヴァラエティ』のプロトタイプと呼べる作品であり、直接的な繋がりを持つ内容となっている。 あわせて公開されたティーザービジュアルは、長編『ヴァラエティ』の舞台で、かつてニューヨークにあったポルノ映画館「VARIETY PHOTOPLAYS」を正面から捉えた写真を使用したもの。鮮やかなネオンの光が美しく輝く様子は、都市の猥雑な夜の雰囲気を醸し出している。 19世紀末に建てられたとされるこの建物は、営業形態を変えながらも2004年まで“劇場”として残っていた。その変遷の中でポルノ映画館だった時期があり、マーティン・スコセッシ監督作『タクシードライバー』でもその外観を見ることができる。『ヴァラエティ』では、客席など内部も捉えられている。
リアルサウンド編集部