学生時代のサークル仲間とエール交わす…お互い一生懸命に生きてきたんだね 家族がいてもいなくても 久田恵(807)
先日、学生時代のサークル仲間から「みんなで集まるから、あなたもおいでよ~」と声が掛かった。そう言われて、なんとも言い難いなつかしさを覚え、出掛けていった。 実は、私は50年以上も前に、その大学を中退している。というのも私の在学中は、激しい大学紛争が起きた時代だった。おかげで、そのさなかに学校に通うことが無意味に思え、私は、よく考えもせずにやめてしまったのだ。しかも、そんな時代の空気の中で、「私は、素手で自分の人生を切り開いて生きていきたい」などと生意気な書き置きを残し、家出までしてしまった。おかげで、久しぶりに会った昔の仲間たちにも、「あなたは、途中で消えたねえ」などと言われた。 そんなわけで、私は、かつての自分のあまりの無謀さを思い出させられてしまった。 思えば、私のいたサークルは、子供に関わる活動をしていた。夏休みに四国の僻地(へきち)5級地に行き、そこで育つ子供たちと交流していたのだ。彼らを教えていた教師たちは、都会からやってきた若者に、山で生きる人々の厳しい暮らしを伝えようと、毎晩のように学習会を開いてくれた。そんな刺激を受け、私としては、のうのうと学生なんかやっていられない、という気持ちになった。 親にとっては、眩暈(めまい)のするような娘ではあったと思う。でも、家出した私は、35歳で家に戻り、両親の介護をし、看取(みと)ることができた。 そして今、半世紀以上も前に出会った仲間が、再会したとたんにずっと共にいたような親密さをお互いに覚えるのが、うれしい。きっと、それぞれの場で、お互い一生懸命に生きてきたんだね、とエールを交わしたくなる再会だったのだろうと思う。(ノンフィクション作家 久田恵) ひさだ・めぐみ 昭和22年、北海道室蘭市生まれ。平成2年、『フィリッピーナを愛した男たち』で大宅壮一ノンフィクション賞受賞。介護、子育てなど経験に根ざしたルポに定評がある。著書に『ここが終の住処かもね』『主婦悦子さんの予期せぬ日々』など。