仙台大、完全復帰のエース渡辺一生「結果的に優勝したい」大学選手権星槎道都大と初戦
全日本大学野球選手権に出場する仙台大(仙台6大学)が、開幕日の10日に東京ドームで星槎道都大(札幌学生)との初戦を迎える。 今春けがから復帰し、1年秋以来のベンチ入りを果たした最速151キロ左腕・渡辺一生投手(3年=日本航空・BBCスカイホークス)が5勝無敗で春季リーグ制覇に貢献し、2大会連続4度目の出場に導いた。完全復帰のエースが、次は全国の頂点を狙う。 ◇ ◇ ◇ これまでの思いが全てあふれ出した瞬間だった。最終節までもつれ込んだ、春季リーグの優勝争い。東北福祉大との直接対決1戦目は先発し7回無失点で先勝。125球を投じたのにもかかわらず、翌日2戦目も登板を志願した。延長10回、タイブレークの場面でマウンドに上がり、リードを守りきった。全日本選手権出場を決め「大好きなチームメートを全国に連れて行けることや、これまでの苦労の思いが全部はじけた」と涙を流した。 1年春からベンチ入りし、同年秋には明治神宮大会に出場するなど華々しいデビューを飾ったが、その後、左肩や肘のけがで長期離脱。同級生や後輩の活躍に焦りを感じる中、リハビリを兼ねた打撃投手をするうちに、打者の反応を見ながら投球を組み立てられるようになった。「打てるコースに投げることでストライク率が上がった」。今となっては「(離脱期間は)なくてはいけなかった」。けがの功名だった。 最初に進学した高校になじめず、日本航空(山梨)の通信制課程に編入した。野球を続けるために入団したクラブチーム、BBCスカイホークス(現GXAスカイホークス)での出会いが転機になった。トレーナーの施術や身体操作などのトレーニング指導で球速が5キロアップし、148キロをマーク。「すてきな出会いがあって成長できたからこそ今の自分がいる。全てをマイナスとは捉えていない」と前を向く。 数多くの困難を乗り越えてきた。「先を見据えた時にやらなくてはいけない」。いつでも、プロ入りの夢が前に進む原動力になった。10日から始まる全日本選手権では「スタンドにいる選手がいるからこそできる試合。1人1人の思いを背負って戦いたい」と意気込む。全国デビューとなった1年秋の明治神宮大会では、初戦の国学院大戦でリリーフ登板も、2/3回を2失点と1イニングを投げきれず、チームも2-6で敗れた。「目の前の試合に全力を注いで大事に向き合い、結果的に優勝したい」。自身2度目の全国の舞台は、エースとしてチームを頂点へ導く。【木村有優】 ◆渡辺一生(わたなべ・いっせい)2003年(平15)12月12日生まれ、横浜市出身。最初に進学した高校から、20年11月に日本航空(山梨)の通信教育課程に転校・編入。神奈川・大和市を拠点とするクラブチーム、BBCスカイホークスで野球を続け、22年に仙台大に入学。同大では1年春からベンチ入りし同年秋の明治神宮大会でも登板。最速151キロ。172センチ、72キロ。左投げ左打ち。