「そりゃやる気なくすわ…」社員の心を折る「営業プロセス管理」の4つの弊害
営業担当者も自己実現したいのだ。 顧客に喜んでもらい、社会の役に立っている実感を、仕事を通じて感じたい。営業プロセスはそれを感じさせてくれるだろうか。私自身は、あまり感じなかった。営業プロセスを考えるときよりも、「顧客はどうしたいのか?」を考えるときのほうが楽しかったし、それで顧客が喜んでくれれば、やる気は倍増した。 営業プロセス重視の組織で、顧客の理想状態や市場の変化についてではなく、自社都合のノルマ未達を理由に叱責でもされたら、その社員はどう思うだろうか。会社を辞めたいと思うのではないだろうか。厳しい環境でも、自分の行動が他者の喜び、他人からの感謝、社会への貢献につながっていると思えば、人は喜びを感じる。働き甲斐にもなる。 会社は、営業プロセスの管理よりも、「営業担当者にとっての働き甲斐って何だろうか?」ということをより真摯に考えて、問い直さないといけないのではないか。 ● 理想は「ソリューション営業」も 実行できる組織はそう多くない もちろん、組織である以上、ルールは必要になる。 ただし、自社都合のものではなく、顧客を基点としたプロセスや、売上目標とは別のKPI(Key Performance Indicator/重要業績評価指標。設定した目標の達成度合いを測る)の設定が望ましい。そのほうが、営業担当者は働いていて楽しくなるのではないか? 「ソリューション営業」という言葉を聞かれたことがある方も多いと思う。ソリューションは直訳すれば問題解決だ。もし、顧客が抱える問題の解決を、営業部門が忠実に実行できたならば、営業担当者の、働くことへの喜び、満足度、組織への貢献度合い(エンゲージメント)は上がるだろう。 しかしながら、多くの組織ではそうなっていない。 ソリューション営業を掲げた組織でも、営業プロセスで管理している限り、いくら売れるかが大事であり、提案中の案件や、クロージング中の案件をぎりぎりつめていくことになる。月初めは「ソリューション営業だ」といっていた営業部長が、月末になると、いくら売れるかしか考えなくなる。 こうした不平不満を、筆者は若手の営業担当者からよく聞かされる。 営業部長は営業実績を考えざるを得ないので、部下へのアドバイスや指導まで手が回りづらい。ソリューション営業を標榜していても、市場の変化や顧客の変化に気づいて部下に指摘することも少なくなってしまう。結果的に、営業担当者の成長意欲は削がれていく。
青嶋 稔