AIを使いこなしているライバル企業に仕事を奪われる恐れ

　生成AIを本格的にビジネスに組み込んでいくには、企業内のデータが重要だと西脇氏は述べる。製造業であれば、設計データや図面、品質管理、顧客対応といったデータは企業が独自に保有するもので、インターネット上にはない。インターネット上にある情報を学習している生成AIには回答できない領域だからだ。 　たとえば、IoTで工場の生産設備の稼働データや工場内の気温、湿度といったセンサーデータを収集し、生成AIに学習させるとどんなことが可能になるか。「生産ラインの現在の稼働状況を教えて」と生成AIに聞くと、収集されたデータを元に稼働状況を答えてくれる。 　さらにアラートがあがっている設備について、原因を分析することも可能だ。稼働状況を報告用のレポートにまとめることも生成AIに頼めば良い。こうしたIoTと生成AIを組み合わせた製造現場の生産性工場の取り組みは、すでに先進企業で行われている。 　たとえばシーメンスでは、生成AIでCAD図面作成を自動化している。「過去にあるたくさんの図面の中から、AIがそれを参考にして新しい図面を起こしてくれる」と西脇氏は話す。さらに、生成AIに「この設計にした意図、理由」を尋ねると、AIがその理由も説明してくれるという。 　そして、図面ができたら、それをCADデータに変換することや、CADで作成した図面を元に、工作機械での加工に必要なNC（数値制御）プログラムに変換することも、自然言語で生成AIに頼むことができ、加工に必要な指示書まで起こしてくれる。 「加工の予測時間、原価の見積もり、そして段取りの資料、工具のセット、加工工程、加工時間の見積もりまで出してくれるので、そこから修正を行えば、かなりの省力化につながります」（西脇氏） 　西脇氏は、「こうした生成AIの能力を使わない手はない」として、「AIに仕事を奪われるとすれば、それはAIを使いこなしているライバル企業に仕事を奪われることだ」と、生成AIを使いこなす側に立つことの重要性を強調した。