アーバンシックが菊への切符獲得 確かな末脚は血統に裏付けされたもの
【栗山求(血統評論家)=コラム『今日から使える簡単血統塾』】 ◆血統で振り返るセントライト記念 【写真】アーバンシックのこれまでの軌跡 【Pick Up】アーバンシック:1着 11着と大敗した前走の日本ダービーは、異例の超スローペースとなり、レースのラスト1000mはレース史上最速の56秒8。前に行った馬、内を回った馬しか勝ち負けに加われない特殊なレースでした。4コーナー15番手で直線大外に持ち出したこの馬が勝負にならなかったのは致し方ありません。 気性面が幼く、折り合いに難があるため、レースぶりに大きな制約がある馬です。ただ、ひと夏を越して気性的な成長がうかがえました。後方ではなく中団で折り合えたのは収穫です。末脚の威力はメンバー中一番なので、直線では楽に抜け出しました。 ホープフルSを勝ったレガレイラとは“父が同じで母同士が全姉妹”という関係。血統構成は100%同じです。牝系はディープインパクトの母として名高いウインドインハーヘアにさかのぼります。ディープインパクトもそうでしたが、アーバンシックとレガレイラも後ろからレースを進めるという共通点があります。 母方にダンジグを持つスワーヴリチャード産駒は成功しており、アーバンシックとレガレイラの他に、スウィープフィート(チューリップ賞)、コラソンビート(京王杯2歳S)、パワーホール(札幌2歳S-2着、共同通信杯-3着)などが出ています。この配合は中山芝で13戦して[4-2-1-6]。勝率30.7%、連対率46.1%と抜群の成績です。 一度使ってこのあとテンションが高くならなければ、菊花賞でも有力候補の一頭でしょう。 ◆血統で振り返るローズS 【Pick Up】クイーンズウォーク:1着 グレナディアガーズ(朝日杯FS、阪神C)の半妹。母ウェイヴェルアベニューは現役時代にBCフィリー&メアスプリント(米G1・ダート7ハロン)を勝った名牝です。本馬は兄よりも馬体に伸びがあり、陣営は以前から「兄とは似ていない」とコメントしています。 母方にアンブライドルドを持つキズナ産駒は、スタンダードなキズナ産駒よりもややスタミナ型に出る傾向があります。中距離のレンジであればスタミナ切れを起こすことはないでしょう。 父キズナは現在、中央と地方を合算して34億円あまりを稼ぎ、ロードカナロアに4億円強の差をつけて総合種牡馬ランキング首位。JRAの重賞勝利数は10勝一番乗りです。現3歳のキズナ産駒は、皐月賞馬ジャスティンミラノが天皇賞(秋)、シックスペンスが毎日王冠、サンライズジパングがジャパンダートクラシックと、菊花賞や秋華賞以外に向かう馬も多く、手駒が豊富。リーディングサイアー争いではかなり有利な立場にあるといえるでしょう。 クイーンズウォークはこれで秋華賞が射程圏内に入りました。キズナ産駒は京都芝2200mで連対率41.1%と驚異的な成績を挙げているので、先の話ではありますが、エリザベス女王杯に出てくるようなら楽しみです。