『あのクズ』海里×ほこ美がリングの上で別れを告げる ついに動き出した大葉の“告白”も
ほこ美(奈緒)と海里(玉森裕太)の2人は時に合わせ鏡のように共鳴し合う。この出会いは必然だったのだと思わされる。ほこ美がボクシングのプロテストを控える中、海里はカメラマンとして大きく飛躍できる千載一遇のチャンスに巡り合い、ラスベガスに行くことになる。 【写真】ボクシングジムにいる井崎(濵田崇裕) 2人がお別れをしたのは、海里が7年前からずっと避け続けてきたリングの上。彼が着けたミットに向かってほこ美が打つストレートパンチの音が鳴り響く中、2人がそれぞれの未来のために、それぞれの最大の味方であり応援団長であり続けるために別れを告げるシーンを、誰が想像できただろうか。 彼らの出会いからこれまでをしみじみと噛み締めながら、知らぬ間に互いが互いを押し上げ、その結果最愛の人と一緒にいられなくなってしまったほこ美と海里に想いを馳せずにはいられなかった『あのクズを殴ってやりたいんだ』(TBS系)第7話。 「俺ちゃんと前進むから。ほっこーのおかげだから」と言う海里に、「私、待ってないですから。だからこれでさよならです。行ってらっしゃい」と告げたほこ美には痺れたし、見惚れてしまった。 7年前に終止符が打たれたかに思えたボクサーとしての海里の人生が、巡り巡って今「ボクシングカメラマン」という新たな夢に彼を向かわせる。海里が師事したスポーツカメラマン・朝倉(安井順平)は、彼が事務所に来たときにボクシングの写真に目を留めていたことを見過ごしていなかったし、海里のピンボケ写真からもスポーツ経験者であることを即座に見抜く。「応援された経験があるからこっちに目が行くんだろ」と、 決して7年前の海里がそれまで見聞きし培ってきたものがそこで全て終わってしまったのではなく、知らず知らずのうちに彼の骨となり血となり脈々と今も引き継がれていることを思い知らせる。ボクサーとして懸命に取り組んできたかつての海里が今現在の彼の中で当たり前に共存していることに海里本人が気付かされ、ようやく過去の自分と今の自分を矛盾なく受け入れられたのではないだろうか。 昔のスパーリング仲間・井崎(濵田崇裕/WEST.)が夢に向かって邁進する姿を収める密着取材のカメラマンのオファーにも朝倉は海里をアサインした。カメラの腕は未熟だがボクシングを知っている海里ゆえの強みに懸け、期待し信頼してくれたのだ。 浅倉役を演じる安井順平は、本作のように職人肌が光る堅物なボス役から、『アンメット ある脳外科医の日記』(カンテレ・フジテレビ系)での院長役のような、上層部と部下の板挟みになり、時に狼狽したりしながらも人の良さが滲み出る憎めない役どころまで、魅力的な上司役を好演している。 魅力的な上司役といえば、ほこ美の上司・大葉(小関裕太)がついに動き出す。渡米前の海里に正々堂々と宣戦布告し、ほこ美のプロテスト当日にも会場に駆けつける。そしてこれまで秘め続けてきた想いを本人にぶつけた。 ゆい(岡崎紗絵)の言葉通り「ゴングが鳴るまで勝つか負けるかは考えない。勝つためには何ができるかだけ考えて精一杯やる(中略)全部出し切ったら負けてもOKなんです。ファイティングポーズをとることが大事なんです」を大葉はまさに実践した。 さて、海里の口から「夢」という言葉が飛び出したのに過敏に反応していた同居人の悟(倉悠貴)が大地(大東駿介)の墓参りをしていたが、ほこ美が信頼していた同期・撫(玉井詩織)の思わぬ本心に触れショックを受けていたように、新たなスタートを切った海里も悟の思いもよらぬ本音を知ってしまうときがもうそこまで近づいているのだろう。 「努力に裏切られてきた人生。負けるのは慣れっこ」と漏らしたほこ美に海里が言った「ボクシングは努力を裏切らないよ」という言葉が、彼ら2人の未来を照らしてくれますように。
佳香(かこ)