「店主の高齢化」で倒産・廃業が急増する昔ながらの飲食店。“深刻な人手不足”を打開する解決策は
店を買収する際には注意点も
店を賃借で経営している場合、売り手はスケルトン返しの場合が多く、撤収費用(解体工事)が必要のため、それが省けるのなら、無償で譲渡してもいいというケースは少なくない。 筆者も、業績悪化と体調不良で店を撤退したいが、スケルトン費用がないため困っていた店をほぼ無償で引き継いだ経験がある。 5年で店を利益が出る店に磨き上げ、顧客基盤も盤石化させ、大手外食企業に売却した。店を買収する際、造作物そのものが譲渡対象の中心となる。 しかし、売り手の中には、高額の譲渡金額を提示する人もいるので要注意だ。比較的、新しい造作物や厨房機器などは「高額で買い取って欲しい」と当然のように言ってくるケースが多い。 そこで売り手と買い手が協議し、内装、厨房設備、什器備品などの売買交渉をして妥協点を見い出し「造作物譲渡契約」にて締結する。その際、売り手と買い手の交渉力にもなるが、買い手の買いたいという意欲が強ければ、価額が上がるのは当然。 だが、売手は造作物だけでなく営業権もその中に組み入れ強気で交渉してくるものだ。例えば「譲渡しますが、せめて3年分の営業利益も譲渡金額に含めて下さい」と年買法で価値算定し、営業権の対価を加えるのである。 これが、3年~5年に間のどこに決まるかは、買い手の価値判断である。その店の将来価値があると認めれば、高く評価し、高い価額になるだろう。
M&Aのメリットとデメリット
売り手は今まで雇用してきた従業員の雇用も継続してもらえる、引き渡し直前まで営業ができる、というメリットもある。 中小事業者が一番気にかけるのは、共に働いてくれた従業員とその家族のことを気にするものだ。売却できたから自分だけがラッキーという問題ではない。 賃借物件の場合、次に入る賃借人まで自ら紹介するのだから差し入れ保証金も、そのまま返してもらえるケースもある。賃借物件の貸主としても、空室期間がなく賃料収入が途切れないことが最大のメリットだ。 ただ、M&Aで入手した物件は中古が多いから、買い手も品質保証にも限度があることを理解することが必要だ。筆者が経験したケースでは、譲渡され半年後に冷蔵庫とエアコンが故障し修理不能だったケースもあった。 それからは、基本合意契約後の資産調査を実施しする際、厨房機器メーカーにチェックしてもらうようにしている。基本合意契約は法的拘束力がないから、調査などで問題があればやめといた方がいいケースも多い。