浦和では闘莉王に怒られ、柏では苦悩したが多くの学びも。現役最後は故郷のクラブで。細貝萌にとってのJリーグとは?【独占インタビュー3】
「長期的に成長していけると感じています」
そして3つ目の群馬は自身の故郷のクラブ。2019年にタイへ赴いた際、膵のう胞性腫瘍という大きな病に直面。それを必死に乗り越えて現役を続行していただけに、「(家族や仲間のいる)群馬でキャリアを終えたい」という思いは強かった。そしてコロナ禍の2021年に加入を決めたという。 「群馬は僕が浦和入りした2005年にJ2初参戦したクラブ。僕の選手としての歴史と重なっているんです。だから、プロになった時に『最終的に群馬に戻って活躍したい。そこでキャリアを終えるんだ』という考えがありました。それを本当に実現できたのは嬉しいこと。 やっぱり地元に戻ってくるのは簡単なことじゃないし、僕の前橋育英の先輩を見ても、山口素弘さん、松田直樹さん、青木剛さんと日本代表歴のある方々がいますけど、群馬に戻ってキャリアを終えたのは自分だけ。喜んでくれる地元の子どもたちとか家族、友だちも含めて、『細貝を間近で見れた』と思ってもらえたことは有難いことだと感じます。 4年在籍して、最後の2年間はピッチ上で勝利に貢献できたとは言えないですし、自分自身もフル稼働できたとは言えない。チームもJ3に落ちてしまいましたけど、こうやって素晴らしいクラブハウス(ザスパーク)もできたし、群馬には全国トップクラスの高校生年代の選手もいる。クラブは生き物なので、良い時も悪い時もありますけど、長期的に成長していけると僕は感じています」 細貝が神妙な面持ちで言うように、群馬というクラブはこの先、まだまだ成長できる可能性がある。彼が加入した時点では、練習着を自分で洗うというプロ入り後、初めての経験もしたというが、クラブ運営規模を含めて拡大していけるはずだ。 前回も触れたが、細貝は2025年から群馬の社長代行兼GMとして新たなスタートを切ることになった。「群馬と関わりを持ち続けたい」という本人の強い思いから、そういった方向に進むことになったのだろう。 故郷のクラブ、サッカー界の発展に寄与できれば、まさに理想的。実際、群馬県出身で彼ほどのグローバルなキャリアを持つ人材はいないと言っても過言ではないのだから、率先して地域のサッカーをけん引してほしいもの。ここからの道のりが非常に楽しみである。 ※このシリーズ了(全3回) 取材・文●元川悦子(フリーライター)
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