「バントマン」に込めた人生観を野球命の脚本家・矢島弘一が語る
フジテレビ系で放送中の土ドラ「バントマン」(土曜午後11:40=東海テレビ制作)は、中日ドラゴンズの全面協力のもと制作されているベースボールヒューマンドラマ。野球経験者の鈴木伸之が、第二の人生を“バントマン”として奮闘する元プロ野球選手を演じている。チャンスや転機は誰にでも訪れるが、それをいかに生かして夢をかなえていくか。それがなかなか難しい。鈴木演じる柳澤大翔ら“バントマン”がさまざまな人々の人生を応援する物語は、疲れた週末の夜に元気を与えてくれる。 そんな作品を紡いでいる脚本家の矢島弘一さんは、野球を愛する人物として知られている。子どもの頃から野球を続け、今はヤクルトスワローズの応援と地域の少年野球チームのコーチを担当している矢島さんだからこそ描ける、野球理論に基づいたドラマなのだ。本作に込めた思い、そして執筆エピソードから中盤に突入したドラマの見どころを探っていく。
──「バントマン」の制作に至る経緯にはどのような経緯がありましたか? 「『野球のドラマを作りたい』というお話をいただいて、その時点では“バントの犠牲心”をテーマにしたいという、作品のイメージを伺いました。お仕事ものにしたいというお話もあったので、『エースで四番』を担っていたプロ野球選手が戦力外通告を受けて…みたいな流れが出来上がったんです。(主人公は)バリバリの体育会系だから、逆に女性の多い下着会社みたいなところで働く設定もありかなと思いましたが、野球選手のセカンドキャリアという部分にリアリティーがある分、思い切って突拍子もないストーリーにしようという話になり、物語の展開が決まっていきました」 ──主演の鈴木伸之さんが演じる柳澤大翔というキャラクターはどのように作られたのでしょうか。 「鈴木伸之さんに演じていただくことが決まった時点で、熱くてちょっと抜けている主人公で行こうと。キャラクターとしては、子どもの頃から野球一筋でずっとエースで四番。周囲から羨望のまなざしを浴びて育ってきたと思うんですね。そういう意味では、『ちょっと調子に乗っている的な部分もあるだろうな』とか、『これまでの成功体験から、なかなか変化を受け入れられないタイプだろう』とか、そんな感じで固めていきました」 ──矢島さんはこれまでも、ファンならくすっと笑えるようなマニアックなプロ野球ネタを作品に挟んでいます。その手法に面白さを感じていたプロデューサーが本作の執筆を依頼したそうですが、たしかに、野球の戦術も物語の展開にうまく絡んでいます。 「ストーリーに大きな流れはありつつも、一話完結なので、毎回登場するゲストの悩みと野球の設定や戦術をリンクさせているのですが、そこは苦労しました。もちろん、ゲストの悩みは大翔の悩みにもリンクさせる必要があります。そうやって毎話構成していったのですが、後半になると徐々に野球ネタも尽きてきて…。かなり大変でしたね」