ポーズを取る山村氏（撮影・勝部晃多）

　バレーボールの新トップリーグ「大同生命SVリーグ」が11日、開幕する。2030年までに「世界最高峰」実現を目指す同リーグ男子のオープニングゲームでは、ともにV候補に挙がるサントリーと大阪Bが激突。来年5月3～6日に予定される決勝を目指し、10チームがしのぎを削る。果たして初代王者に輝くのはどこか。昨季まで前身のVリーグ・サントリーの監督として4度のリーグ制覇に導いた山村宏太氏（43）が優勝の行方を占った。14チームが出場する女子は、12日にNEC－埼玉上尾など4カードで開幕する。 　◇　　◇　　◇ 　初代王者の「本命」には、ひいき目抜きでサントリーを挙げる。イタリア・セリエAで3年間もまれた代表アウトサイドヒッター（OH）の高橋藍、ポーランド代表としてパリ五輪銀メダル獲得に貢献した技巧派サウスポーのシリフカの強力アタッカー2人が新たに加入。身長218センチのムセルスキーや、代表ミドルブロッカー（MB）小野寺ら、昨シーズンVリーグを制したメンバーも健在だけに、隙が見当たらない。 　新リーグとなり、レギュラーラウンドの試合数は8試合増えて44試合になった。固定メンバーで全試合を戦い抜くことはより難しくなるが、層の厚いサントリーにとっては懸念材料にはならないだろう。日本代表候補にも選ばれたMB鬼木ら成長著しい若手が控える点も有利といえる。 　「対抗」は大阪B（旧パナソニック）だ。MB山内やオポジット（OP）西田、リベロ（L）山本、MBエバデダンに、今季からOH富田やセッター（S）永露らが加わり、各ポジションに日の丸メンバーが並ぶ。その中で最注目の新戦力が、キューバ代表アタッカーのロペス。身長は190センチと突出して高くはないが、彼のスパイクを初めて見た時は「同じ競技なのか」と思うくらいの爆発的なスピードとパワーに度肝を抜かされた。チームになじめば、手がつけられない存在になるだろう。 　この2チームを脅かしそうな「単穴」が愛知（旧ジェイテクト）。昨季Vリーグでは8位に終わったが、今季はリーグ一といえる大型補強に成功。顔触れが一変した。代表OPの宮浦が2年の海外修行から復帰し、同じく代表のL小川とMB高橋健が加わった。さらに米国代表デファルコ、ブラジル代表ルカレッリと経験豊富なタレントも加入。リーグ屈指といえるアタッカー陣を操る代表S関田のトスワークが鍵を握りそうだ。 　上位6チームが進むプレーオフ争いは、最後までもつれるだろう。チーム3季目となる東京GBは面白い存在。元日本代表主将のOH柳田や、パリ五輪代表のS深津旭がけん引する。絶対的な個はいないが、経験豊富な2人を中心に結束すれば侮れない。22－23年シーズンを制した名古屋は、エースとして屋台骨を支えてきたクレクが抜けた。新加入のオランダ代表OPのアブデルアジズが、その穴を埋められるか。東レ静岡や日鉄堺は、勝負どころでの爆発力に期待したい。新外国人2人を補強したが迫力不足は否めない広島T、昨季9位のV北海道、最下位に沈んだVC長野の3チームは苦戦を強いられそうだ。 　SVリーグでは、同時にプレーできる外国人選手枠（アジア枠を除く）がこれまでの1人から2人に増えた。もちろん海外選手のプレーは勝敗の鍵を握る重要な要素。一方で、リーグが成長するためには日本人の活躍が必須で、盛り上がりには下位チームの奮闘が不可欠と言っても過言ではない。「日本人も負けていない」「どの試合に行ってもレベルの高い試合が見られる」。そう思われるリーグになることで、目指す世界最高峰の景色が、自ずと見えてくるはずだ。 　◆山村宏太（やまむら・こうた）1980年（昭55）10月20日生まれ、東京・東村山市出身。205センチの長身ミドルブロッカーとして筑波大時代から日本代表で活躍。卒業後はVリーグ・サントリー入りし、08年北京五輪出場。13年は日本代表主将。17年に現役引退し、20年にサントリー監督に就任。23年のアジアクラブ選手権で日本クラブ史上初制覇、同年の世界クラブ選手権銅メダル。24年に勇退し、解説や講師など、競技発展に尽力する。 　◆SVリーグとは　昨季までの国内トップリーグ「Vリーグ」を再編成し、27年までの完全プロ化、30年までの「世界最高峰リーグ」実現を目指して発足。同時にプレーできるアジア枠を除く外国人選手枠が1人から2人に増枠となった。初年度の今季は、男子10、女子14チームが参加し、ホーム＆アウェー形式で44試合のレギュラーラウンドを実施。男子は上位6チーム、女子は上位8チームがプレーオフに進出。決勝は男子が5月3～6日、女子は同2～4日に予定されている。