自立の助けを…通常学級に在籍していても抱える「困り感」がある。「子どもの自信につなげてあげたい」。教員の巡回指導が始まった
発達障害の子どもたちへの指導や支援を含めた特別支援教育がスタートして今年で18年目となる。学校関係者や保護者らに広く知られるようになり、特別支援学級などで学ぶ児童生徒は急増。教員不足や学びの質といった課題も見えてきた。鹿児島県内の現状を報告する。(シリーズ・かわる学びや@鹿児島~特別支援教育の今=10回続きの④より) 【シリーズ「特別支援教育の今」を初回から読む】まさか自分の子が…かつて無理解だった特別支援学級は今、急速に増える。上限8人の小所帯。「ここが、この子の居場所」
トランポリンで飛びはねて体幹を鍛えたり、書くために必要な腕力が付くように新聞紙を両手で裂いたり-。9月下旬、姶良市の姶良小学校では、自閉症スペクトラム障害の傾向がある2年生の男児が、通級指導教室担当の大塚佳子教諭(52)から1対1で授業を受けていた。「自立活動」と呼ばれるもので、学習や生活上の困難を克服するための特別な指導だ。 県総合教育センターの授業モデル研究に協力する大塚教諭は、担当する児童の学級担任や保護者に聞き取りを重ね、「困り感」などの把握に力を入れる。「苦痛にならず、楽しんで力を付けられるよう工夫している。ほっとできる居場所にもしたい」と話す。 通級を希望する保護者は右肩上がりで、他校から指導を受けに通う児童もいる。自校生は1人当たり週2時間を1時間に減らし、日常のケアで対応するようにした。「一人でも多く、子どもができることを増やして自信につなげてあげたい」と意欲を語る。
◇ 通級指導も特別支援教育の一環だ。通常学級に在籍しているが軽度の障害がある児童生徒らを対象に、さまざまな自立活動が行われている。県教育委員会によると、県内の公立小中学校と義務教育学校で通級を利用する児童生徒数は、2007年度は小学校のみの622人だったが、24年度は1567人(小学1486人、中学81人)に上る。 2.5倍増だが、全国の国公私立の小中学生では22年度19万6288人に上り、07年度の4万5240人から4.3倍と倍近いペースだ。全国より伸びが緩やかな要因を、県教委特別支援教育課は県域の広さにあると推測する。財政上、すべての学校には通級教室を置けない。自校にない場合は他校へ通う必要があり、保護者の送迎が欠かせないことや、その間は授業を受けられないこともネックになっている。 ◇ 打開策として期待されるのが、配置されている学校の教員が巡回するスタイルだ。県教委は本年度、薩摩川内、鹿屋、奄美の3市でモデル事業を始めた。
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