古着EC の「mushroom」、広告費かけずに集客に成功 「SOLD OUT」が広告代わりに
T.D’Inc(ティーディーインク)は20年以上、自社ECサイト「mushroom(マッシュルーム)」と新潟の実店舗にて、古着やヴィンテージ品を販売している。広告に一切費用を割いていないが、業界の常識とは異なる斬新な取り組みで集客に成功している。 <ECで古着を売るという、新しい挑戦> 同社は2002年、新潟市・古町の店舗から事業を開始し、約2年後にECサイトを開設した。 「古着は実店舗で見たり触れたりしながら購入するのが主流だった。ただ、新潟の店舗だけでは、なかなか全国のお客さんを巻き込むことができない。もっと大きい規模感で事業をしたいと思い、会社を良くする手段としてECサイトを開設した」(土田鏡代表)と当時を振り返った。 さらに古着業界では、新年に名品を売り出すのが定石だったが、土田代表は覆した。 「他の店が年に1回名品を出すなら、うちは毎月出そう、何でもない平日にも出していこうと思った」(同)と話す。 現在は毎日、午後10時にサイトを更新し、新しい商品を掲載するようにしている。 2002年に事業を開始してから、コロナ禍の期間を除いて、土田代表自らほぼ毎月渡米し、買い付けをしている。 「良い売り手であるためには、良い買い手でなければならない。現地で良いものを見極め、積極的に購入する。バイヤーとしてディーラーから厚く信頼されることで、良い仕入れができる」(同)と話した。 <良い商品がきちんと売れていくサイト作り> 販売済の商品を、あえてサイト上に掲載し続けている。「SOLD OUT」という表示が、顧客の購買意欲をかき立て、広告のような役割を果たしているため、広告に費用を割くことなく、集客に成功している。 「うちのサイトは一見すると、かなり高額な商品を売っているように見えるかもしれない。実際に数十万円、数百万円の商品がたくさんある。ただ、実態は薄利多売で、古着マニアからすると『こんな希少なものが、こんなに破格で買えるのか』という感覚だと思う。良い商品がきちんと売れていくサイトだから、ユーザーとしても更新を見逃せない。そこがうちの一つの強みになっている」(同)と話す。 土田代表は自身について、「自営業の家に生まれたこともあり、根は生粋の商売人。他のバイヤーが買えない商品も『こうすれば売れるだろう』と勘が働くので、自信を持って買う」と話す。 ユーザーに買ってもらえない古着店を運営しても意味がないという考えのもと、「これからも誰よりも古着を売りたい」と語った。
「日本ネット経済新聞」記者 渋井紅奈