センバツ高校野球 専大松戸、歴史の扉開く 先制3点、守り切り快勝 /千葉
第95回記念選抜高校野球大会第5日の22日、県勢の専大松戸は第2試合で常葉大菊川(静岡)と対戦し、3―0でセンバツ初勝利を挙げた。初回に3点を先制して流れをつかむと、エースの平野大地(3年)が最後まで相手に得点を許さなかった。新たな歴史の扉を開いた選手たちに、アルプス席からは大歓声がわき起こった。次戦は大会第8日第2試合(25日午前11時半開始予定)で、高知(高知)と履正社(大阪)の勝者と対戦する。【近森歌音、竹田直人】 選手たちは「よっしゃあ!」と声を上げて元気よく入場。ウオーミングアップをする選手たちを見つめていた大森准弥主将(3年)の母陽子さん(50)は「主将として苦しんだこともあったと思う。チーム一丸となって本当に頑張ってほしい」とエールを送った。 立ち上がりの守備では硬さが目立ち、失策がらみで1死一、二塁のピンチを招いた。だが、冬に鍛えた堅い守りを発揮し、無失点で切り抜ける。心配そうに見守っていたアルプス席の応援団の表情が笑顔に変わり、大きな拍手がわき起こった。 するとその裏、先制のチャンスがやってきた。2番打者の清水友惺(2年)が四球で出塁すると、続く中山凱(同)、吉田慶剛(3年)が連続で死球を受け、満塁に。ここで打席が回ってきた太田遥斗(同)がセンター前に運び、清水と中山の2年生コンビが生還した。その後、押し出しの四球で更に1点を追加した。 この様子を見守っていた太田の父貴繁さん(52)は「緊張で吐きそう」と胸を押さえながら、「打ってくれると思っていた。初回に3点入ったのは大きい」と笑顔で話した。太田は守備でも、三回表に気迫のダイビングキャッチを見せ、チームをもり立てた。 あとは先発した平野の独壇場だった。ランナーを出しながらも要所を締め、相手に本塁を踏ませない。甲子園のマウンドで躍動する息子の姿に、父勝広さん(44)は「緊張やプレッシャーはあったと思うが、楽しんでいるように見える。このまま逃げ切ってほしい」と語り、緑のメガホンを鳴らして声援を送った。 最後は三塁に飛んだ当たりを大森主将が落ち着いてさばき、一塁手の広川陽大(同)に送ってゲームセット。「歴史を塗り替える」と宣言して甲子園に乗り込んだ専大松戸の選手たちは、見事に「有言実行」を果たした。 ◇声出し応援で笑顔 ○…専大松戸のアルプス席では、生徒やOBら約1500人が3年半ぶりに声を出して応援し、選手たちを後押しした。声出し応援は初めてという野球部の林大遥選手(2年)は、試合開始直後こそ慣れない様子だったが、チームが初回に先制すると、大声が出るようになった。「甲子園で声出し応援ができてうれしい」と笑顔。きびきびした号令で応援を先導したチアリーディング部の中川原杏珠花(あすか)さん(17)も「久しぶりに大きな声が出せて楽しい」と喜んだ。 ……………………………………………………………………………………………………… ■ズーム ◇憧れ舞台で完全復活 専大松戸・平野大地投手(3年) 完全復活した「背番号1」がチームを勝利に導いた。この日は得意の直球だけでなく、変化球を織り交ぜながら、打たせて取る投球で新境地を見せた。持丸修一監督も「これまでなら点を取られていたピンチの場面で、耐えたことは成長だ」と目を細めた。 ここまでの道のりは平たんではなかった。体に異常を感じたのは昨夏の県大会の準々決勝だった。背中と肋骨(ろっこつ)に痛みを感じ、思うように投げられなくなった。秋の大会には何とか間に合わせたものの、痛み止めを服用しながらの登板だった。 冬場は療養を優先させつつ、徹底して下半身を強化した。1月には痛みがほぼ取れ、2月中旬には本格的に練習へ復帰。フォームの調整を重ね、大舞台にピタリと合わせてきた。 最速151キロの右の本格派として大会屈指の好投手と言われるが、中学時代は無名の捕手だった。高校入学後に投手へと転向すると、「毎月1キロの増量」を目標に掲げ、毎日カレンダーに体重を記録するなど肉体改造に取り組んだ。体が大きくなるに連れて球速はみるみる増し、昨夏には150キロの大台に乗った。入学時に65キロだった体重は、今では87キロにまで成長した。 憧れの舞台は、楽しくてあっという間だった。「強豪校が相手でも『全員野球』で勝ちに行く」。一回り大きくなったエースは早くも次を見据える。【近森歌音】