【特集「乗るなら今だ!心昂る、V8エンジン」④】「カウントダウン」が始まっている今だからこそ、乗らなければ後悔する「痛快無比!なディフェンダー」
走れば5L V8の搭載は正解だと実感できる
また、ランドローバーの動向に詳しい人なら「レンジローバーにはBMW製の最新4.4L V8を積んでいるのに、なぜディフェンダーにはそれより古い自社製の5L V8を選んだのか?」と思うかもしれないが、実はディフェンダーV8がイギリス本国で発売されたのは2021年で、レンジローバーよりひと足早かった。 「だから旧型を積む以外になかった」と捉えることもできるが、実際にステアリングホイールを握れば、BMW製V8よりも自社製V8のほうが、このクルマにマッチしていることに気づくだろう。 その鍵を握るのは、過給器がスーパーチャージャーとされている点にある。クランクシャフトとメカニカルに連結された一種のポンプによって空気を強制的に圧縮。これを混合気としてシリンダーに送り込むのだから、爆発的なパワーが発揮されるのは当然のことである。 しかもターボチャージャーと違って過給圧が高まるのを待つ必要がないので、まるでレーシングエンジンのように瞬時にトルクが立ち上がってくれるのだ。あたかも、私が30年近く前に英国で体験した「チューンド・ディフェンダー」を髣髴とさせるかのように・・・。 しかし、愛好家の「手作りディフェンダー」と大きく異なるのはその足まわりで、路面からのコツコツというショックは巧みに吸収するのに、ピッチングやローリングといった姿勢変化を的確に制御してハードコーナリングも軽々とこなすうえ、姿勢が安定しているから正確なハンドリング特性を維持してくれるのだ。
エンジン車が生き残るチャンスは・・・まだ、ある?
ピッチングが過大なためアンダーステアやオーバーステアに陥ることが多かった往年の「ディフェンダーV8」とは、この点がまるで異なる。もちろん、新型は内外装のデザインが洒落ていてクオリティ感も高い。これもまた、この30年間で大きく進化した点といえる。 話を電動化に戻せば、2030年代のどこかのタイミングで各国の自動車メーカーはBEV化に向けて大きく舵を切ると予想される。 それまでまだ10年前後の時間が残されているが、ブランドによっては自分たちの先取性を強調するために早めにBEV化を進めたり、別のブランドは自分たちのキャラクターがBEVとはマッチしないとして、できるだけ先延ばしにしようとしている。 この辺の事情は市場やセグメントによって大きく異なるので、「ある年を境にして全世界の自動車メーカーが一斉にBEV化する」という状況にはならないと予想される。 とはいえ、タイムリミットは確実に迫っている。エンジン車が生き延びる数少ないチャンスは大気中のCO2から生成するeフューエルが実用化されることにあるが、その成否もまた、神のみぞ知る領域にある。つまり、エンジン車好きにとって「未来は明るい」と必ずしも言い切れないのが、悲しい現実なのである。 しかし、いまならまだ個性豊かなエンジン車が手に入る。その幸福を噛み締めながら、今後の動向を注視することにしたい。(文:大谷達也/写真:村西一海)