21世紀最大の謎? 「一体、何が面白いのか」PPAP大流行の秘密をひも解く
再表象の自由度を高めた視覚的要素の排除
一方で、やはり元ネタの仕掛け人はピコ太郎であることも事実であり、なぜこれほど二次創作がウイルス的に蔓延したのか、という点は留意すべきです。すでに多くの専門家が分析しているように、シンプルでキャッチーな単語による歌詞とサウンド、振り付けが多くの人たちの二次創作欲求を掻き立てたことは間違いないでしょう。 さらに踏み込むとすれば、元ネタ動画にペンもアッポーもパイナッポーも具体的な素材を使用しなかったことが、二次創作時における再表象の自由度を高めたと考えられます。元ネタ動画において中途半端に視覚的要素を入れた場合、それこそ中途半端にその動画で完結してしまい、ただの意味不明なつまらない動画で終わってしまったかもしれません。 しかし、ピコ太郎のダンス以外は一切の視覚的要素を排除していたことで、「結局ペンパイナッポーアッポーペンって何なんだ?」という疑問を視聴者に与え、再表象の余地を与えることに成功した、と言っても過言ではないでしょう。
情報消費の基本的な枠組みに変化あり
また、現代の若者たちにとってのコミュニケーション方法の変化、音楽や動画などのコンテンツ需要のあり方の変化、という点も見過ごせません。スマートフォンが若者にとっても当たり前のツールとして普及したこと、そしてデバイス機能の進化によって若者の間で行なわれているコミュニケーションが大きく変化していることは、意外と注目されていません。最新のiPhoneやスマートフォンではかつてのコンパクトデジタルカメラに劣らないほどの画質で撮影が可能であり、編集アプリを用いて簡単に自作の静止画や動画を作成することができるようになりました。 これによって、日々のコミュニケーションにおいて簡単な編集動画や静止画、イラストを友人に送る、またはタイムラインにシェアすることは今の若者にとってはごく普通の行動になっています。SNSやメッセンジャーアプリがよくメディアでも話題に上がりますが、それはあくまでコミュニケーションの場でしかなく、そこで交わされている内容にこそ大きな変化があり、今回のPPAPの下地となっているのです。 さらに、このようなコミュニケーションを前提とした時代においては、かつてのように音楽や動画を視聴、鑑賞するだけではその消費は成立しません。彼らが自らアレンジし、友人間あるいはWEB上で広く公開された場でシェアする段階までが消費の基本的な枠組みとなっているのです。