「新記録より送りバント」を選んだワケは? “ドラフト注目”大商大・渡部聖弥が語る泥臭さの原点…右打ち、外野手、「せいや」なら指名の球団は…
「すんごい気合い入りました!」
10月15日、大津・皇子山球場の大阪経済大戦。2勝すれば、大阪商業大のリーグ戦6連覇。新記録更新が決まる。 大阪商業大は、すでに初戦に敗れて、土俵際に追い詰められていた。 渡部聖弥、最初の打席でジャストミートで捉えた打球が、背走するセンターの頭上をあっという間に超えて、右中間フェンスに達した。 実はこの試合の直前、通路で顔を合わせた渡部選手に「もし負けたら……」と凄んで見せていた。もちろん冗談である。 「今の、すんごい気合い入りました! 負けないっす!」 去年の終わりあたりから、注目され始めた気負いからだろうか。早く打ちたがって、右肩が早く出たがって、左方向に引っかけたような打球が増えていたので、実は心配していた。昨秋のリーグ戦は.407も打っていたのに、この春は.220。「ヒットメーカー聖弥」にとっては大事件だった。 「緊張感」に「気合い」が注入された渡部聖弥。さらに、「欠点のない選手」ぶりを発揮したのは、その翌日。 1勝1敗で迎えた第3戦、つまり優勝決定戦である。 0対1の劣勢で迎えた9回無死一、二塁。 この試合最大の見せ場がやって来て、打席に4番・渡部聖弥。 長打なら自らヒーローの可能性があって、サインは「打て!」だったそうだ。 聖弥、いったい、どうしたのか? よもやの送りバントを絶妙のラインで一塁線に転がして、1死二、三塁。シングルヒットでも逆転サヨナラの場面を作ってみせた。 「優勝がかかっている試合ですから、当然、勝ちが最優先です。結果、サヨナラで優勝できて、ほんとに嬉しいです!」 この場面、ヒットを打っていればリーグ戦通算120安打となって、自身のリーグ新記録をマークすることもできた。 「学生野球最後の打席になるかもしれんのに、打てば記録を更新できたかもしれんのに、そういう場面で送りバントですよ。選手としてもそうですけど、人間としてすばらしいじゃないですか」 4年間、手塩にかけた「人情味」の富山監督、声を震わせて、鬼の目にも涙(失礼! )である。
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