ジムニーなんて発売から6年も経ってもまだ1年待ち! ランクルは受注停止! 人気のクロカンSUVがいつまで経っても買えないワケ
SUVブームが続く一方で長納期が解消しないモデルがある
いまはSUVの人気が世界的に高く、新型車の開発も活発だ。欧州メーカーを中心に、SUVの輸入車も急増した。その結果、SUVの人気がさらに高まり、売れ行きも一層増えている。 【写真】やっぱこの形でしょ! 再再販のランクル70に乗ってみた 販売ランキングの上位にもSUVが多く入るが、売れ筋は、トヨタのヤリスクロス/カローラクロス/ハリアー、ホンダ・ヴェゼル/WR-Vなどだ。いずれも乗用車と共通の前輪駆動をベースにしたプラットフォームを使っており、シティ派SUVに分類される。 このタイプのSUVが増えた結果、需要に原点回帰が見られるようになった。SUVの出発点ともいえる悪路向けのトヨタランドクルーザー70/250/300、スズキ・ジムニー&ジムニーシエラが人気を高めている。これらのSUVは、後輪駆動をベースにした耐久性に優れたプラットフォーム、悪路で駆動力を高める副変速機を備えた4WDなどを搭載する。 そして、悪路向けSUVは全般的に納期が長い。ランドクルーザー300は、納期の遅延どころか受注を長らく停止させており、トヨタのホームページにも明記されている。ランドクルーザー250は、ホームページに記載はないが、複数の販売店が「KINTOを除くと受注を停止している」と述べている。 KINTOとは、トヨタが運営する定額制カーリースのことだ。これを使うとランドクルーザー250を4カ月程度で納車できるが、リースだから、最長7年の使用期間を終えると車両を返却せねばならない。最終的にユーザーが車両を買い取り、自分の所有にすることはできない。 また、KINTOは返却が前提だから、走行距離や車両の使い方に関する制約も多い。悪路向けのSUVでは、ドレスアップを楽しむユーザーも見られるが、KINTOではボディに穴を開ける改造はできない。リースだから、車両を借りていることを忘れず大切に扱う必要がある。
悪路向けSUVの納期を短縮させるのは簡単ではない
このほかジムニーとジムニーシエラの納期も長い。2018年の発売以来、約6年を経ても納期は縮まらず、販売店では「ジムニー、ジムニーシエラともに、納期はいまでも1年以上を要する」という。 悪路向けSUVの納期が長い理由は、需要に対して生産が追い付かないからだ。そのため、ユーザーを長く待たせれば商品力を低下させる。商品力は、デザインや機能だけでなく、価格、顧客に対する各種サービス、納期など、さまざまな要素によって決まるからだ。 従ってメーカーは、売れ行きに応じて生産規模を増やし、納期の遅延を食い止める必要があるが、それをしない、あるいはできない背景には複数の理由がある。 まず、その車種がメーカーの国内販売にとって、大量に売るべき存在ではないことだ。大量な販売を目的にすれば、日本仕様を最優先で生産するが、そうではないから遅れも生じる。表現を変えれば、悪路向けのSUVには海外向けの車種が多く、その結果、日本仕様の生産枠が限られてユーザーは長く待たされる。 ふたつ目の理由は、増産には危険が伴うことだ。ユーザーとしては「納期が長いなら増産して売りまくり、納期を縮めてガッポリ儲ければいいだろう」と思うが、そうもいかない。増産体制を整えると、その生産ペースを保たなければ、メーカーは余剰な生産設備をもつことになるからだ。 さらにいえば、メーカーだけの問題ではない。部品を供給するサプライヤーにも増産を要請することになり、生産台数が下がれば、さまざまな下請企業が不利益を被る。 しかも、ランドクルーザーシリーズやジムニー&ジムニーシエラの場合、悪路向けのSUVだから、ほかの前輪駆動の乗用車には使われない個性的な部品やユニットも多い。品目によっては、製造できるサプライヤーとその生産個数が限られることもあり、メーカーが生産ラインを増やせば即座に増産できるものではないのだ。いろいろな要素が絡む。 しかし、ユーザーの立場で考えると、これらの事情はまったく関係ない。ユーザーは、メーカーが造ったクルマをメーカー系列の販売会社から購入しているからだ。メーカーは安全から納期まで、数々の重い責任を背負っており、そこに自動車ビジネスの難しさとメーカーの底力がある。
渡辺陽一郎