<箱根駅伝>東大ランナーは補欠?問われる学生選抜の存在意義
その一方で大きなモチベーションを持つ選手もいる。それは、チームとして本戦出場を狙うことが難しい大学のランナーたちだ。学習院大の選手として二度の箱根出場経験を持つ、公務員ランナー・川内優輝(埼玉県庁)は、学連選抜がとても刺激的な“場所”だったという。同じような境遇の選手たちと親しくなり、ライバル心を抱くことができたからだ。学連選抜で箱根を走るチャンスがなければ、大学時代に大きく成長することはできなかったかもしれない。 そこに冒頭の東大生ランナーである。近藤秀一は「東大生として箱根を走る!」という野望を掲げて、1浪の末に理科2類に合格。東大の狭き門を突破した。しかし、その夢は大学2年生にして消滅しようとしている。 前々回から「本大会出場回数が2回を超えないこと」という選考基準が加わり、近藤は前回も11番目の選手として関東学生連合で本戦登録されており、貴重な1回がカウントされている(箱根に出場しなくても、エントリー選手に入ると1回出場とみなされる)。そして、今回は予選会で個人総合58位に入り、10番目の選手として関東学生連合に名前を連ねた。 従来は予選会上位10人をベースに出走メンバーが決まっていたが、関東学生連合を率いることになった藤原監督は、11月26日の1万m記録挑戦競技会と八王子ロングディスタンス1万mの結果から出場する10人を決定する方針に変更。自己ベストを出す選手が続出して、エントリー上位10人の1万m平均タイムは学連選抜史上最速となる29分05秒34(出場校では10位相当)に上昇するも、近藤はチームで12番目のタイムに終わったのだ。順当なら2大会連続で「補欠」にまわることになる。そして、近藤は、来年2月の東京マラソンに初挑戦することを表明した。 チームの指揮官である中大・藤原監督は、今回の箱根を「名門復活」に生かそうとしている。選考レースの1万m記録挑戦競技会で中大の堀尾謙介が大幅ベストとなる28分34秒54をマーク。本番では花の2区での起用が有力だ。予選会で屈辱を味わった中大だが、箱根未経験の2年生エースに貴重な経験を積ませて、新時代を切り開いていくつもりでいる。 正月の箱根駅伝で、オープン参加ながら白色のタスキをつなげる関東学生連合の選手たち。上位でフィニッシュを迎えるか、本戦の経験を次回以降につなげるのか。チームの存在意義を証明するには、確かな“結果”が必要になるだろう。 (文責・酒井政人/スポーツライター)