若い世代に好評「つみたてNISA」 70歳からでも長期投資デビューは遅くない
金融資産がない若い世代こそ、コツコツ長期投資で資産形成が必要
こうした業界常識に抗ったビジネスモデルを貫いてきたセゾン投信の実証データを見ると、現役世代にも投資信託の需要はたしかに潜在しています。 2008年の同社の顧客属性を見ると、40代以下が75%を占めていましたが、現在も40代以下が70%とその比率は大きく変わっていません。そして世代ごとの積立投資家比率は40代以下でおしなべて70%程度ありますが、50代・60代と世代が上がるに従ってその比率は下がっています。その傾向は10年前と変わっていません。 金融資産がない若い世代こそ、資産形成が必要となります。現役世代ならば毎月の所得から一定の金額を少しずつ拠出して投資残高を累積させていく積立投資こそが、時間を味方につけて無理なく資産形成できる方法なのです。金融事業者の役割はその機会を提供し、現役世代に気づきを与えることなのではないでしょうか。 実際、米国の事例を見ても、同国の投信残高は日本の20倍超と生活者への圧倒的普及が見て取れますが、毎月の資金流入フローは、その半分近くが401KおよびIRA経由、つまり実質的には月々の積立投資が占めています。一般生活者層における長期資産形成の普及には「積立投資」が前提条件だと考えても過言ではありません。
「つみたてNISA」は現役世代向けだけではない 60歳超も長期投資に初挑戦のきっかけに
ところが「つみたてNISA」を現役世代向けと決め付けてしまうのも実は早計です。すでに業界全体に当該制度は資産形成層のためのもの、とデファクト化された常識が定着しつつありますが、これを投資未経験者に向けた効用から考えてみましょう。 投資による資産形成には関心があるものの、損失を恐れて逡巡している人は世代を問わず結構多いのです。そうした人たちの一歩を踏み出す後押しとなるのが、「毎月積立」という投資行動でしょう。 ・毎月少額から始められるので怖くない。 ・値下がりしてもより安く買えるチャンスと思えば、大きく落胆する必要もない。 ・毎月ずっと同じ行動を続ければ値動きを気にしてそれにとらわれることからも解放される。 積立投資は長期投資に向けた意欲をサポートする行動規範であり、投資未経験者を投資に導く極めて有効な手段なのではないでしょうか。 だとすれば、資産のほとんどが預貯金だという60歳超の高齢層にも、投資行動を体験してもらう手段として「つみたてNISA」は大いに威力を発揮するはずです。 人生100年時代の概念が急速に一般化して来た昨今、たとえば70歳からでも長期積立投資に充分な余命時間があるのです。残存生存期間ずっと積立投資家であり続け、必要に応じて運用資金を取り崩しながら投資を続けることの有効性を説き、ファイナンシャルジェロントロジー(金融老年学)の課題を叶えるカルチャーとして定着させたいものです。 高齢層が「つみたてNISA」をきっかけに動き出せば、個人金融資産の過半を占める現預金が資本市場へと向かう、マネーフローの大転換が一気に加速されるでしょう。 (セゾン投信株式会社 代表取締役 中野晴啓) セゾン投信株式会社代表取締役社長。1963年生まれ。87年クレディセゾン入社。セゾングループ内で投資顧問事業を立ち上げ運用責任者としてグループ資金の運用等を手がける。06年セゾン投信(株)を設立。公益財団法人セゾン文化財団理事。一般社団法人投資信託協会理事。全国各地で年間150回講演やセミナーを行っている。