與真司郎が体験した東京レインボープライド──「自分らしくいられると、人生が本当に楽しくなる」
約40分ほどの番組イベントの後、足早に向かったのは12:00から始まるこの日のメインイベント、パレードの隊列参加だ。60もの組織、団体がフロートを出し、代々木公園を起点に数時間かけて渋谷から表参道を歩く。與はこの中で2番目の出走団体となる「公益社団法人Marriage For All Japan -結婚の自由をすべての人に」のフロートに乗った。一緒に乗っていたのは、俳優の篠井英介。舞台、テレビ、映画で活躍する大ベテランの俳優だが、特に舞台では女形の芝居で名演をいくつも残している。 「篠井さんとはフロートの上で初めてお会いしたのですが、めちゃくちゃやさしい方でホッとしました。乗ったはいいけど、いったい何をすればいいのかよく分からなかったので、篠井さんとご一緒させていただいたことで緊張感がほぐれました」 とはいうものの、出走してから30分強、表参道の坂道をファンがフロートを追いかける中、彼の表情は硬いままだった。このときの心境を、隊列が会場に戻り次の取材に向かう彼に聞いたところ「想像していた雰囲気とだいぶ違っていた」と語ってくれた。 「パレードがあることを知っている人はもちろん応援してくれているし、表参道近辺の路面店はレインボーフラッグを出していたり手をふってくれたりしたのですが、それを知らない人たち……通常の日曜日の買い物客の人とかは“何をしてるんだろう”という感じでした。僕に気づいて“あ、AAAの人だ”と言ってくれる人はいたけど、イベントの存在を知っている人と知らない人の温度差にびっくりしちゃって……。フェスティバル会場にいる分にはみんなこのイベントを知った上で楽しんでいるけれど、一歩その外に出るとこんなにも違うんだということを思い知りました。やっぱり知ってもらうことって重要だな、と。このあとプライドステージに登壇しますが、そこでしゃべることは考え直さないと、と思っています」 その後、いくつかの取材や番組出演をこなした彼は、パレードの全隊列が会場に戻ったプライドステージ(代々木公園イベント広場にある野外ステージ)に登壇。パレード開催中に照りつけていた日は傾き、ポツポツと雨が振り始めていた。登壇直前のバックステージに来た彼はまだ神妙な面持ちだった。が、昨年7月のファンイベントにもかけつけた大親友、青山テルマとの再会で、一気にほぐれた表情に。このあとのスピーチでも語るとおり、「信頼できる友達」の存在がどれほど重要かがひと目で分かる瞬間だった。 登壇した彼は、総合MCの女装パフォーマー・ブルボンヌと長谷川ミラ(モデル・ラジオナビゲーター)に、パレード参加の感想や昨年のカミングアウトを経ての今の心境を聞かれ、「めちゃくちゃ緊張しました」と、語り始めた。 「27歳まで誰にも言えず、(幼い頃は)世界中で僕一人だけなんだ、と思っていました。このまま(の気持ちで)日本でずっとやっていくなんてどうすればいいのか。生きていけるのか。でも、信頼できる友達がいてくれたことで、オープンになることができました。ゲイであることを受け止め、それをなんでもないこととして受け入いれてくれる。だって、悪いことではないんだから。27歳のとき、アメリカに行ったことですべてが変わりました。同性のカップルが手をつなぎ、街を歩いているのを観たときの衝撃は今も忘れません。だからこそ、東京レインボープライドのようなイベントは必要だと思うんです。ストレートに生まれた方がよかった、と思うのではなく、自分らしく生きることを受け入れられる世の中に、一日でも早くなることで、僕のように悩み苦しむ人が少なくなることを願っています」 そして、この日の20:00にYouTubeで解禁される新曲「Upside Down」を紹介。「聴いていただければ分かっていただけると思います」と、今の彼の気持ちはすべて詰め込まれていることを話し、ステージ前を埋め尽くした人々の大歓声に包まれながら、この日を終えた。そして、この日の熱量をそのままにしたステージのあと、1時間ほど話を聞いた。